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PLC

SMAPの解散はつまりプロダクトの成長限界ということでは

シナプス後藤です。

お盆休みの真っただ中の方も多いと思いますが、「SMAPが解散」というニュースが飛び交っていて、今もラジオでSMAPの曲をかけまくっています。
SMAPは年齢でいうと、私と同世代なので、多分高校生くらい、夢がモリモリくらいからずっと、同世代のアイドルがテレビに出ていてそれを眺めているという、そんな時代背景を私も生きてきました。

SMAPの登場で、アイドルがドラマもバラエティもいろいろやる、と言うように変化してきました。その後、ジャニーズはこの路線を踏襲してきたわけですが、今では、嵐が大人気ですね。

メンバー同士の不仲説や女性マネジャーの問題、その他色々なネタ、組織論、リーダーシップ論、生き様論などあるようですが、個人的な見解、マーケティングな見方では、SMAPというプロダクト(製品)に限界がきた、と言うことなのだろうと考えています。

製品の基本理論としてプロダクトライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)、という考え方があります。様々な製品は、導入期−成長期−成熟期−衰退期、という流れを経ると言うものです。製品特性により差はあり、必ずしも全ての製品にあてはまるわけではありませんが、概ねこの傾向がある、と言われています。

mblog:プロダクトライフサイクル
※参考:PLCはイノベーター理論が背景にあると言われます。こちらも併せてご参考まで。
mblog:イノベーター理論

プロダクトライフサイクルを知ることで、いつどの程度投資の判断が出来ます。投資が必要なのは導入期から成長期、成熟期になると徐々に投資を減らし、衰退期は刈り取りを行う、と言う考え方です。背景には市場の成長性が影響しており、市場が成長している時には投資に対するリターンが大きいのですが、成長性が低くなる=成熟期になると投資してもその後のリターンに限りがあり業界順位の変動も少ないため、投資を抑制していくわけです。成熟期の後半〜衰退期にかけてはこれ以上の投資はリターンを生まないため、刈り取り戦略、つまり投資せず利益だけを得ていくいわゆる「金のなる木」に位置付けます。

さて、SMAPはこのプロダクトライフサイクルで言えば、成熟期の後半くらい、まだ稼げますが、徐々に衰退していく、という地点にいたのではないかと想像します。
ジャニーズ社としては金のなる木は投資せずにカネを稼ぐ、という点でまだまだ利益が見込めたと思いますが、積極投資には至らない。
だから、辞める、解散する、と言われると「何としても止める」という努力にも限界があります。

一方、メンバーも今のやり方にはどこかに限界を感じていたのではないかと思います。成長スピードが昔ほどに感じられない。シェイクやセロリを歌っていた頃のどこまでも伸びていく感が多分ないのでしょう。
経営的に見れば、金のなる木であればそのままならせておく、もし新たな成長を期待するなら、製品にテコ入れして新市場を取りに行く、という二択になりますが、ジャニーズ社から見れば、投資するなら嵐やHey!Say!JUMPの方がよっぽどROIは高いので、頑張ってテコ入れする必然が弱いわけです。

SMAPメンバーにしたらそれでは困るわけですが、自分たちから成長の可能性を示せなかった、ということでもあろうかと思います。
個々の感情面から見れば色々な考え方はありますが、製品としてSMAPにまだまだ大きな可能性を感じていれば追加投資も十分あったわけで、だからこそメンバー個々人としてみれば、「SMAP」というフォーマットにこだわる必要はないのかな、と思います。

つまり、これからは個々人(中居、木村、稲垣、草なぎ、香取)を商材と見て、SMAPの派生ブランドとして伸ばしましょうと。ジャニーズ社からすれば、5つの派生ブランドでポートフォリオが組めない、というのは残念かもしれませんが、彼らには新たな大きなチャンスがあるのだと思います。

プロダクトライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)

プロダクトライフサイクルとは、商品が生まれてから消えていくまでにどのようなサイクルがあるかを整理したフレームワークです。
一般に、Product Life Cycleの頭文字を取って、PLCと書かれることが多いようです。

PLCには4ステージあり、それぞれ、導入期、成長期、成熟期、衰退期です。
導入期:
・商品が市場に導入されたときにはごく限られた人たちが購入するだけで、世間的な認知度も低いため、じわじわと売上げが上がっていきます。
成長期:
・成長期に入ると多くの人たちが興味を持ち、購入し始めます。成長期に入ると、「今、流行の」というキーワードで語られることが多くなります。成長期の前半では流行に敏感な人が買い始め、徐々に、より多くの人に使われることになります。
成熟期:
・ある程度商品が浸透してくると、徐々に成長が鈍化し、市場も商品も成熟してきます。
衰退期:
・その商品へのニーズがなくなったり、多くは代わりの商品が発生して衰退していきます。

たとえば、デジタルカメラ(特に、コンパクトデジタルカメラ)を考えて見ましょう。
デジタルカメラは、フィルム型の写真の代替品として登場しました。当初は画像も悪く、価格は高く、と良い所はまるで無い状態だったはず(実は、使ったことが無いので知らないのですが)なのですが、メーカーが未来を信じて、あるいは、ごく一部のマニアに支えられて細々と作られてきたようです。wikipediaによると、デジタルカメラの元祖はイーストマン・コダックが1975年に発明されたようです。その後、一般向けの上市は1990年のDycam社「Dycam Model 1」。その後、約5年間は導入期として、細々と市場が動いていた模様です。
成長期に入るのは、カシオ計算機が「QV-10」を発売してからです。これは、画像をPCに取り込む機能を持っており、Windows95の普及と併せて急速にデジタルカメラが売れていきます。ここから、各社がデジタルカメラに参入します。最初は「画素数競争」。それが途中で手振れ補正などの新たな機能を付加することで差別化競争に入ります。
日本では、デジタルカメラが高機能化し多くの方が手にするようになったことで成熟期に入ります。基本的に「新しくデジタルカメラを買う」という人が存在しなくなり買い替え需要がベースになってくるわけです。こうなると、各社とも他社ユーザからのスイッチを促進します。もう一つ、成熟期は基本的に利益の刈り取りにも当たりますので、新たな投資をするよりも新しい市場や商品への投資を開始します。それが一眼レフであったり、携帯用のカメラですね。
今では、携帯電話に搭載されたカメラが高機能化し、デジタルカメラと遜色ない、と言うより元々デジタルカメラのブランドであったCyber-ShotやEXILIM等のブランドを冠した機種も登場しています。
まだ、無くなる、というわけではありませんが、そろそろ市場が停滞していますので、携帯電話が代替品としてかなり出てきていますので、「コンパクトデジタルカメラ」というカテゴリは徐々に縮小していく可能性があります。これが衰退期につながるかもしれません。

関わっている方からすると衰退は溜まったものではありませんが、早い遅いはともかく、代替品の存在や、ニーズそのものがなくなることで、市場は衰退します。例えば、今、危機におかれているのがネクタイかもしれません。クールビズ、節電ビズでネクタイを締めなければならない、というニーズがなくなってしまったため、かなり市場は縮小してしまっているのではないでしょうか?

商品によって、それぞれの期間の長さや動きに違いはありますが、一般的には4ステージを踏むと考えられます。これを4つのステージに分けるのは、ステージ毎に戦略の打ち手が変わってくるためです。

導入期の基本戦略は、とにかく市場自体を盛り上げることです。多くの新しい商品が市場に出されたにもかかわらず、全く話題にもならずに消えていきます。このタイミングでは競合がどうの、とかわが社の強みはどうの、と言う前に、市場そのものを立ち上げなければならないのです。
成長期に入ると、一気に市場が拡大しますので、いかに効率よく商品を供給していくか、と言うのが一つのポイントになります。特に、シェアを獲得することがその市場で重要な場合には、特に重要になります。一方で、このタイミングで「この市場はおいしい」と見た多くの競合が参入してきますので、特に成長期の後半ではターゲットを絞り込んだ差別化が必要です。つまり、投資競争など、とにかくスピードを上げて顧客を獲得していく競争環境なわけです。
成熟期はもはや新しい顧客を獲得できないので、顧客獲得のための投資より、今いる顧客から利益をいかに効率よく得るか、と言うことが重要になってきます。所謂「刈り取り」ですね。シェアが獲得できていれば、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)でいう「金のなる木」の状態になります。
最後の衰退期になると、「いつ撤退するか」(あるいは残るか)というのが重要な議論になります。多くの場合、全く必要ないということはありえないのですが、複数社が残れるほどの市場でもなくなってしまうため、最後に1社だけがほそぼそと(しかも儲からないのに)残るということもありえます。一方で、1社だけだと独占状態になりますから、わずかな市場ではありますが、最後まで利益を獲得できる可能性も残されます。

PLCは商品特性や市場特性によって、きれいなカーブにならないケースもありますが、戦略を立てる上でかなり重要な要素になります。また、様々なマーケティング理論、経営戦略理論のベースになっていることも多いので、概念として覚えておきたいものです。
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