シナプス後藤です。

イオンがダイエーを完全子会社化することに伴い、イオングループとダイエーの店舗ブランドを立地に応じて使い分ける、という方針を取るようです。

日本経済新聞:イオン、ダイエーを完全子会社へ 15年春に上場廃止 (2014/9/23)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HC7_S4A920C1MM8000/

イオンもダイエーもいわゆるGMS(General Merchandise Store:総合スーパー)と呼ばれる小売業態ですが、記事によると、地方はイオン、都市部はダイエーのブランドをメインに展開していく、という方針を取るようです。

これは、総合スーパー、或いは、小売業態はブランドが効く(看板を変えるだけで集客効果があるか、高価格で売れる)ということを前提にしています。

スーパーのような小売業態の場合、かなりの部分がMDつまり、仕入・購買によって価値が決まってきます。どのようなものを仕入れるか、という品ぞろえの面と、幾らで仕入れるか、という価格の面です。
一般に、これらの業態が規模拡大を目指すのは、バイイングパワー、つまり仕入先(主にメーカー)に対する価格交渉力を持つことが目的になります。今や巨大化したイオングループとセブンアンドアイグループは、かなりの価格交渉力を持っているはずで、これを武器に地域の中規模のチェーンより安くて良いものを仕入れることが出来、結果として周辺の小売業から顧客を奪う事が出来るのです。
※そうやってシャッター街が作られた、という批判もありますね。

最近では、PB(プライベートブランド、小売が企画する商品)にも力を入れており、イオングループの店舗であれば、トップバリューブランドが並んでいるはずです。ダイエー以外にも、ピーコックやカスミ、いなげやあたりもグループですから並んでいるはずですね。
小売が作るPBは、いまでこそセブンアンドアイが「セブンゴールド」でより価値の高い商品を出すようになってきましたが、元々は価格施策です。ブランド投資を押さえつつ小売の棚を確保できることで在庫リスクを減らせるので低コスト=低価格が実現できるわけです。

GMSのようなチェーンでは、どのチェーンも仕入元が同じナショナルブランドのメーカーになりますので「ウチだけしかない商品」をそろえるのが難しく、どこも似たり寄ったりになります。但し、限られた棚をどう構成するかによって魅力的な店舗に出来たりできなかったりするわけです。

だから、本質的には仕入と棚割が勝負、と言うのは変わりません。少なくとも価格についてはチェーンでの購買効果もあるのでそれほど変わらず、棚割がキーになるのは変わらないでしょうね。


では、総合スーパー事業でブランドは効くのか?

総合スーパー事業でも当然ブランドは効きます、が凄く効くわけではないでしょう。
少し極端な例を出すと、例えば、「成城石井」であれば、高級なもので他のお店にない、例えばキャビア等がおいてあるだろう、と言う事を想像するでしょう。或いは、「ドンキホーテ」であれば雑多なものが安価においてあるだろう、と言う事を想像するでしょう。
だから、少し大事なお客さんが自宅に来る場合にはとりあえず成城石井に、文化祭で騒ぎたい時はとりあえずドンキホーテに行くわけです。

これは極端な例ですが、ブランドには効果はあります。場所によっては、イオンがお洒落をして出かけていく場、と言うところもあります。特にショッピングモールを展開していて土日にイベントをやるようなところ(首都圏郊外だとららぽーと等がそれに当たるかもしれません)になっていますので、良いイメージを持って貰える可能性はあるでしょう。
私はダイエーが生活圏にあったことが無いので、一消費者としてのイメージは余り無いのですが、関西の方であれば、昔から良いイメージを持っているのかもしれません。

但し、ブランドを変えても中の人が変わらなければ、MDは変わりません。結局、ブランドを維持するために、イオンならイオンらしく、ダイエーならダイエーらしい品ぞろえや価格帯にしつつ、しかも周辺の消費者の好みに合わせた価値にしていかないといけないのです。


日本の消費者のライフスタイルが変わってきていますので、GMSからコンビニに業態の覇権が移り、今ではECにシフトしようとしています。その中でどうやって新たな価値を出していくのか、単に看板を付け替えただけでない、新しい取り組みが必要なのかもしれません。
もし、「ダイエー」というブランドが創業者 中内功さんが目指した価格破壊、「良い品をどんどん安く」を体現しているものだとすれば、GMSという業態と同様でダイエーというブランドも伸びていく可能性は薄いでしょう。
イトーヨーカドーがセブンアンドアイにブランドを変えたように、ダイエーも何か別の新しい価値に変えて看板も書きかえることが、本来、中内さんが目指していた「お客様のために」を体現することなのではないでしょうか。