シナプス後藤です。

マーケティングや競走戦略を考える時、「競争優位性」という言葉がよく出てきます。これは、競合他社と比較して自社が競争上優位なポジションにあるか、あるいはそれを獲得できるかどうかどうかの尺度です。
例えば、
「このビジネスは自社に競争優位性があるか?」
等と使います。

競争優位性を考える、とは、自社が他社に勝てる理由は何か、を考えることです。多くの場合は、顧客に支持される要素が他社より優れているか、または、競合他社に比較して低コストが実現できているかどうか、のいずれか一方、或いは両方になります。

さて、競争優位性という言葉そのものは極めて簡単なのですが、「何が競争優位性を構築する鍵になるのか?」は極めて難しいテーマです。
勿論、構築するとなれば「あらゆる企業が努力している分野なので簡単に実現できるはずがない」ため当たり前のように難しいのですが、既に優位性を保持している自社や他社を分析するだけでも難しいケースが多いです。

難しさの原因は、顧客に支持される理由や競合他社より低コストが実現できる理由が一つではないし、競合他社も複数存在するので、「誰に勝っているのか?何が勝っているのか?」の組み合わせが多数想定されることにあります。


競争優位性の観点や分析方法は様々な本で紹介されていますが、余り明確に書かれていないのが、「競争劣位」という概念でしょう。
私が初めてこの言葉に触れたのは、J.B.バーニーの「企業戦略論(上)」でした。
企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続


競争優位性の分析は、「どうやって勝つか?」という勝つための要因を探す、考えることではありますが、勝っている要因は多数あります。ただ、分けて考えたいのは、「負けないための要因」と「勝つための要因」は異なる、と言う事です。
言いかえれば、
・業界の標準的な利益を得るための要素

・業界で1位になる、あるいは標準以上の利益を上げるための要素
は異なる、と言う事です。

業界の標準的な利益を得るための要素を持っていなければ、そもそも勝てるはずがない、これが競争劣位の状態です。


例えば、最近、色々と動きの早いソフトバンクを中心とした携帯キャリアのエントリーを書いていますが、携帯キャリアにとって、「周波数帯」と言うのは極めて重要なリソースです。これがなければ、業界標準的な利益を得ることがそもそも難しい。
もっと言えば、携帯キャリアにとって、周波数帯を持っていなければ、参入することすらできないわけです。
一方で、このリソースは「持っていればよい」というものでもない。勝つためには契約者数の獲得や、魅力的な端末の提供等が必要になってきます。
参考:
「M&Aで何を買う?・・・ソフトバンクのイー・アクセス買収から競争優位性を考える」
「携帯キャリアのKSFが変化したこと」

競争優位性を考える際には、「競争劣位」と「競争優位」を分けて考えることでよりシャープな分析が出来るのではないでしょうか。