今月は、インフルエンサー・マーケティングを専門とする戦略PR会社
ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長 『本田哲也』氏
を迎え、お話を聞いていきたいと思います。

▼テーマ:『これが本物の戦略PR!その1人が30万人を動かす!』

http://www.bluecurrentprjapan.com/

【今月のゲスト】…─…─…──…─…─…──…─…─…──…─…─

●本田 哲也(ほんだ てつや)氏

1970年生まれ。セガの海外事業部を経て1999年、世界最大規模のPR会社
フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。
2004年より同社バイスプレジデント。
2006年8月「ブルーカレント・ジャパン」の設立に伴い、同社代表に就任。
国内外の大手製薬企業、生活用品メーカー、エンターテイメント企業など
を対象に、インフルエンサー・マーケティング・プログラムの策定・実施、
コンサルティング実績多数。
月刊PRIR(宣伝会議)主催「PRコンサルタントオブザイヤー2005」
優秀賞を受賞。

【出版書籍】
「その1人が30万人を動かす!影響力を味方につけるインフルエンサー・
 マーケティング」(東洋経済新報社)
「戦略PR 空気をつくる。世論で売る。」(アスキー・メディアワークス)
「オバマ現象のカラクリ 共感の戦略コミュニケーション」
(アスキー・メディアワークス) 他・・・韓国版など多数

◆インタビュー◆──────────────────────────

【名和田】
 ご無沙汰してます。益々のご活躍ぶりですね。
 さっそくですが「ブルーカレント」という会社の成り立ちと業務内容に
 ついてお聞かせ下さい。

【本田】
 どうもご無沙汰してます。おかげさまで、あちこち飛び回ってます(笑)
 まず、ブルーカレント・ジャパンですが、この会社は、インフルエンサー・
 マーケティングを専門とする戦略PR会社として2006年8月に設立され
 ました。

 マスメディアPRからCGM(日本最大のブロガークチコミネットワーク)まで、
 一括して第三者を巻き込み、消費者を動かすことができる会社です。

 また米オムニコムグループの一員として、世界的なグループネットワーク 
 が 有するリソースを提供することが可能です。

【名和田】
 なるほど。何となく米国の最先端的なイメージがある会社ですよね。
 知らない人の為に、インフルエンサーマーケティングについても教えて
 ください。
 
【本田】
 わかりました。
 例えば同じ商品カテゴリーなのに、なぜ「売れるもの」と「売れないもの」
 が生まれると思いますか?

 「商品力」の差? それとも「宣伝力」の差? 

 もちろん、それもあるでしょう。
 しかし、です。ネットの進化により情報洪水が起こり、消費者が疑い深く
 なり、広告がスルーされてしまうようになった現代。成功と失敗の格差は、
 商品力や宣伝力だけでは説明できませんよね。
 では、いったい何がこの時代の成否を分けると思います?

【名和田】
 ・・・・・・・何でしょうね?

【本田】
 いいですか。その答えは、その商品が売れるための『空気』ができているか
 どうかということなのです。

 商品を売るためにつくり出したい空気。
 そんな空気をつくって、売り上げにつなげる手法。

 それが「戦略PR」という考え方であり、インフルエンサー・マーケティング
 のノウハウなのです。

【名和田】
 ほう。『空気』・・ですか。
 そういわれてみれば、今の世の中確かに「空気」というのは有るかも知れま
 せんね。

【本田】
 爆発的な情報量に囲まれた消費者は、次第に、企業の一方的な情報発信より
 も、信頼できる第三者からの情報やクチコミを頼りに購買行動を起こすよう
 になってきました。
 また、消費者と企業の距離がこれまでになく近づいてきたこの時代では、
 「消費者とどう向き合うか?」「何をメディアとして捉えるか?」に新しい
 発想を持つことが成功へのカギです。

 その新しい発想が「インフルエンサー」――つまり、消費行動に影響を与え
 る専門性 やカリスマ性を持った人たち――であり、私達ブルーカレント・
 ジャパンは、そのインフルエンサーをマーケティングに活用する戦略PRの
 専門集団というわけです。

【名和田】
 非常にわかりやすいご説明有難うござます。
 では、その具体的な事例についてもお聞かせ下さい。

【本田】
 事例は色々有りますが、最新の成功事例としては「USJ」のケースが 
 有ります。
 
 テーマパーク側の依頼は、夏休みに来るお客さんを増やしてほしいという
 ものでした。「数あるレジャーの中からテーマパークを選ぶ。その決定的
 な理由となるものをPRしていきたい」

 ・・・そんな依頼だったのですが、私達が考えたのは「絆(きずな)」
 というキーワードでした。テーマパークのお客さんには、アトラクション
 を楽しむだけでなく、お互いの関係を深めたいという思いがあると考えた
 からです。

 「テーマパークにいくと絆が深まる」
 
 というデータを発信できれば大きな話題になると考えました。
 まず行ったのは、「絆」についての意識調査。
 およそ3000人を対象に行った結果、「家族で絆が築けている」と自信を
 持って答えた人は3割未満。そして、今よりも絆を深めたいと考えている
 人がなんと8割以上もいることがわかりました。
 
 そこで、テーマパークで絆が深まるということをどうやって実証できるか
 と考えて着目したのが、脳科学の分野でした・・・。

 ※詳しくは、是非こちらのサイト↓をご覧ください。
 http://www.nhk.or.jp/10min/joho/ja/frame.html?0&09&59

 このケースは、今月アジア太平洋全域の「アジアPRアワード」を受賞し
 ました。

【名和田】
 このキーワード探しがある意味肝なんでしょうね。
 それとこれは、仕掛ける側の立場での話しですが、やはりインフルエンサー
 マーケティングの最大の魅力は「わかりやすさ」に有りますよね。
 正直、この情報が溢れる社会においてのプロモーションは、絶対にわかり
 やすさは重要ですからね。

 しかし、アジア太平洋全域の「アジアPRアワード」ですか?
 それは凄いですね。おめでとうございます!

【本田】
 有難うございます。
 確かにわかりやすさは有りますね。

【名和田】
 そのインフルエンサー・マーケティングを導入するに当たり、
 向き・不向きの企業、あるいは条件などは有りますか?
 
 例えば、短期に成果を求めるのは不向き?
 
【本田】
 広告キャンペーンのように、あまりに短期的に売上向上を期待すると
 失敗します。
 やはり、半年から1年をかけてじわりじわりと効果が出るものです。
 むしろ、そうやって土壌をつくった上で、広告やプロモーションで刈り
 取っていくことで効果を発揮します。

【名和田】
 予算はどうでしょう?
 やはり、低予算では難しい?

【本田】
 広告枠を買うのではなく、第三者を「巻き込む」手法ですから、例えばテレビ
 CMのように何億もかかるものではありません。
 通常のマーケティング予算の基準から言えば、費用対効果は高いといえます。
 なので低予算でも大きな成功をあげれる可能性は大いにあります。
 
 とはいえ、インフルエンサーを巻き込む為に、様々な仕掛けは必要になりま
 す。その為の予算は必要ですから、余りに低予算では難しい場合もあります。

【名和田】
 私なんかの立場からすると、中小零細企業でも実施は可能か?ということに
 非常に関心が有りますが・・・その辺りはいかがでしょう?

【本田】
 「大きな予算ありき」ではありません。また、会社や商品の知名度が重要か
 と言うとそうでもありません。
 知られていなくとも、話題性が工夫できたり、また社会にとって意味のある
 ような商品やサービスであれば、たとえ中小企業でも充分に実施が可能です。

 企業の大小の問題とはいえないでしょうね。
 むしろ、全く差別化もできず、深い開発思想もなく生まれてしまったような
 商品やサービスの場合は、大企業でも中小企業でも難しいと思います。

【名和田】
 そうですか。
 是非、低予算、中小零細企業向けというプログラムの開発に期待します。

 話題を変えますが、今は「戦略PRブーム」といった風潮もあります。
 これについてお聞かせ下さい。
 
【本田】
「戦略PRブーム」については、私自身も自著などでそれを広めた
 張本人であり、PRに従事する人間としてうれしくも思います。
 しかし、正しい認識が欠如したり、「戦略PR万能論」のような過剰な
 期待が高まったりすることは、非常にリスキーだと感じています。
 
 そもそもPRは、広告のように広告枠を買わないで、第三者に情報を
 発信してもらうことで信頼性を担保する代わりに、コントロールできない
 という弱点があります。ウラを返せば、広告は企業発の情報発信なので
 「言いたいことを言いたい時に言える」という強みがあります。  
 
 このような特徴を忘れないでください。
 「PRはコントロールできないもの」という前提で、何らかの理由で
 思った通りにならなかった場合も想定しておかなくてはなりません。

【名和田】
 確かにそのような捉え方をされてしまっている部分も有りますね。
 
【本田】
 残念ですが、PR会社自体が誤解を招く売り込み方をしてしまっている
 ケースも実情としてありますからね。
 本来の戦略PRの役割は「空気をつくって消費者に気づきを与える」
 ということが主であり、それだけで消費者が購買行動を起こすものでは
 ありません。
 
 「空気」という名の情報環境をPRで創出した後で、広告や店頭の施策が
 連動し、それを購買行動に結び付けることで「刈り取り」が行われるわけ
 です。

 こうした認識を忘れ、「とにかく戦略PRで突破しよう」などとなって
 しまうと、マーケティングとして失敗するばかりか、せっかく根付こう
 としているPRが「一過性のブーム」で終わってしまいます。

 ブームに踊らされず、マーケッターは本来の目的―「消費者を動かす」
 ことにフォーカスしなければなりません。
 さらに、全体シナリオの中で戦略PRが有効かどうかの判断と、
 その特性を理解したうえでの導入・展開が求められるのです。

【名和田】
 おっしゃるとおりです。
 最後に貴社のビジョン、目指す立ち位置など
 今後の展望についてお聞かせ下さい。
 

【本田】
 実は2010年以降のビジョンが2つあります。

1.今年から始まった「戦略PR」のブームを一過性のものとせず、
  日本のマーケティングに定着するよう、もっと実績をつくる!

2.いよいよ日本のメーカーも本当の意味でグローバルにマーケティングを
  展開するケースが増えていきます。
  日本国内での実績のみならず、弊社の本当の強みは、戦略にもとづいた
  実施をグローバルで展開できることにあります。
  日本発のグローバルPRのサポートをすることで、
  日本企業の力になりたいと思います!

【名和田】
 世界へ向けたPR会社として今後も頑張ってください。

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<インタビューを終えて>

確かに今は広告が効かなくなったと言われ、戦略PRがブームと
なっている節がある。
しかし、真の戦略PRを理解せず、小手先だけの手法に走れば、
手痛いしっぺ返しに合うことも事実だろう。
本田さんの話は、業界第一人者としての重みを感じた。
                       (by nawata)
◆ 名和田 竜(なわたりょう)────────────────

企業のマーケティング戦略から、販売戦略・促進を専門とするマー
ケティング・コンサルティングプランナー。
ランチェスター戦略をベースに、個人及び小さな会社が大きな会社
に勝つための戦略指導に力を注ぐ。

・シナプス・マーケティングカレッジ講師
・NPOランチェスター協会認定コンサルタント
☆著書『誇りを持って稼げる/最強の私を手に入れる!』(ビジネス社)
(http://www.relation-stage.com/)