シナプス後藤です。
オリンパス社の損失隠しに対して、東京証券取引所(東証)は「上場維持、特設注意市場銘柄に指定」という方向で調整しているようです。
Yahoo!ニュース:「オリンパス上場維持へ=特設注意市場銘柄に指定―東証」(時事通信)
twitterやfacebook等を見ていると、「上場廃止が筋だろう」という意見も多々見られます。
この手の話題では一般的に賛成者は特に意見表明をしないことが多いので、上場廃止意見多数、という意味ではなく、賛否が分かれるところだ、と想定しています。
私が理解している事件の概要は、
・オリンパス社が過去のM&Aによって出た損失1000億円以上を「飛ばし」によって隠した
・当時、現在の経営陣のほとんどがその事実を知っており、損失隠しに加担している模様
・有価証券報告書等、東証への提出書類は虚偽の記載となった
・オリンパス社は、この「飛ばし」を含めたとしても倒産にならないし、事業への影響も少ない(と見られている)
・株式市場への影響は、オリンパス社の株価は下がるものの、それ以外に大きな影響はない(と見られている)
と言うところでしょうか。
これをベースとして、東証は「上場維持、特設注意市場銘柄に指定」という意思決定を下そうとしています。
その根拠は、
■特設注意市場銘柄に指定するのは、
[1] 虚偽があったことは事実
[2] 損失隠しは一部の経営陣によって行われた
■上場維持なのは、
[3] 経営陣の一部の加担であり、会社全体が腐っているわけではない
[4] 上場廃止基準に該当する債務超過には陥っていない
[5] 株式市場への影響は軽微
[6] 上場廃止によって既存株主への影響が大きい
辺りだと考えられます。
一方、「上場廃止すべきだ」という意見を持つ方は、上記の[3][5]がおかしいだろう、と主張することが想定されます。つまり、「経営陣の一部と言っても、社長、会長クラスなのだから企業全体が腐っているのと同じだ」、「虚偽記載を許すという事はそれだけで市場の信頼性を失う行為であり、株式市場への影響は大きい」という主張です。
これらはいずれも「どの程度腐っているか」「どの程度影響が大きいか」という主観に基づいた定性議論であり、東証のさじ加減で決まる範囲でしょう。言いかえれば、今回の事実は東証のさじ加減によってどちらにも転ぶわけです。
さて、私はこの意思決定は、「東証の顧客は誰なのか?」という議論に見えます。
東証は、「株式会社東京証券取引所」であり、一つの企業体です。株式市場という資本主義の根幹をなす場を運営しているので限りなく社会的存在ではありますが、それでも営利団体なのです。ですから、当然、顧客に対してサービスをする必要もあるし、利益の出るサービスをしなければなりません。マーケティング戦略上は「ターゲットは誰か?」という議論があってしかるべきなのです。
では東証の顧客とは誰でしょうか?
東証のホームページを見てみます。
東証のホームページ:http://www.tse.or.jp/index.html
最初のページに、「個人・一般」「機関投資家」「上場会社」「上場を検討」「取引参加者」とありますので、これらが顧客に該当するのでしょう。
今回の議論で大きく影響しそうなのは、
(A)日本を安定市場として透明な市場に投資したい投資家(主に、海外の投資家が想定されます)
(B)オリンパス社の株を購入している投資家
(C)オリンパス社(既存上場会社のうちの一社)
(D)既存上場会社
(E)今後上場を検討している企業
辺りでしょうか。セグメント(B)、(C)は恐らく今回の決定にはポジティブです。一方で、(A)、(E)はネガティブですね。(D)は企業のスタンスによって若干変わるでしょう。
そう考えると、東証が上記の意思決定をする、と言う事は、日本の株主や既存上場企業をメインターゲットと考えている、と見えます。
東証も自分だけで決定するのではなく、金融庁や経済界(ほとんどが既存上場企業)の意見、あるいは、日本の機関投資家の意見も聞いているように思います。それらを総合した時に、「重大な影響はない」と判断しているのではないでしょうか?
そうすると、判断基準である[5][6]が大きくフォーカスされてくるわけです。
一方で、これによって、セグメント(A)、(E)、つまり、透明な市場を期待している投資家や企業は離れていく可能性があります。特に海外投資家にとっては、日本の株式市場はOne of themですから、他の市場で投資すればよいだけの話です。
東証は誰を顧客とすべきなのか、これは単にオリンパス社の問題だけでなく、東証の提供価値は何なのか、将来の成長戦略をどう描くのか、を問われている深い議論なのだと思います。
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オリンパス社の損失隠しに対して、東京証券取引所(東証)は「上場維持、特設注意市場銘柄に指定」という方向で調整しているようです。
Yahoo!ニュース:「オリンパス上場維持へ=特設注意市場銘柄に指定―東証」(時事通信)
twitterやfacebook等を見ていると、「上場廃止が筋だろう」という意見も多々見られます。
この手の話題では一般的に賛成者は特に意見表明をしないことが多いので、上場廃止意見多数、という意味ではなく、賛否が分かれるところだ、と想定しています。
私が理解している事件の概要は、
・オリンパス社が過去のM&Aによって出た損失1000億円以上を「飛ばし」によって隠した
・当時、現在の経営陣のほとんどがその事実を知っており、損失隠しに加担している模様
・有価証券報告書等、東証への提出書類は虚偽の記載となった
・オリンパス社は、この「飛ばし」を含めたとしても倒産にならないし、事業への影響も少ない(と見られている)
・株式市場への影響は、オリンパス社の株価は下がるものの、それ以外に大きな影響はない(と見られている)
と言うところでしょうか。
これをベースとして、東証は「上場維持、特設注意市場銘柄に指定」という意思決定を下そうとしています。
その根拠は、
■特設注意市場銘柄に指定するのは、
[1] 虚偽があったことは事実
[2] 損失隠しは一部の経営陣によって行われた
■上場維持なのは、
[3] 経営陣の一部の加担であり、会社全体が腐っているわけではない
[4] 上場廃止基準に該当する債務超過には陥っていない
[5] 株式市場への影響は軽微
[6] 上場廃止によって既存株主への影響が大きい
辺りだと考えられます。
一方、「上場廃止すべきだ」という意見を持つ方は、上記の[3][5]がおかしいだろう、と主張することが想定されます。つまり、「経営陣の一部と言っても、社長、会長クラスなのだから企業全体が腐っているのと同じだ」、「虚偽記載を許すという事はそれだけで市場の信頼性を失う行為であり、株式市場への影響は大きい」という主張です。
これらはいずれも「どの程度腐っているか」「どの程度影響が大きいか」という主観に基づいた定性議論であり、東証のさじ加減で決まる範囲でしょう。言いかえれば、今回の事実は東証のさじ加減によってどちらにも転ぶわけです。
さて、私はこの意思決定は、「東証の顧客は誰なのか?」という議論に見えます。
東証は、「株式会社東京証券取引所」であり、一つの企業体です。株式市場という資本主義の根幹をなす場を運営しているので限りなく社会的存在ではありますが、それでも営利団体なのです。ですから、当然、顧客に対してサービスをする必要もあるし、利益の出るサービスをしなければなりません。マーケティング戦略上は「ターゲットは誰か?」という議論があってしかるべきなのです。
では東証の顧客とは誰でしょうか?
東証のホームページを見てみます。
東証のホームページ:http://www.tse.or.jp/index.html
最初のページに、「個人・一般」「機関投資家」「上場会社」「上場を検討」「取引参加者」とありますので、これらが顧客に該当するのでしょう。
今回の議論で大きく影響しそうなのは、
(A)日本を安定市場として透明な市場に投資したい投資家(主に、海外の投資家が想定されます)
(B)オリンパス社の株を購入している投資家
(C)オリンパス社(既存上場会社のうちの一社)
(D)既存上場会社
(E)今後上場を検討している企業
辺りでしょうか。セグメント(B)、(C)は恐らく今回の決定にはポジティブです。一方で、(A)、(E)はネガティブですね。(D)は企業のスタンスによって若干変わるでしょう。
そう考えると、東証が上記の意思決定をする、と言う事は、日本の株主や既存上場企業をメインターゲットと考えている、と見えます。
東証も自分だけで決定するのではなく、金融庁や経済界(ほとんどが既存上場企業)の意見、あるいは、日本の機関投資家の意見も聞いているように思います。それらを総合した時に、「重大な影響はない」と判断しているのではないでしょうか?
そうすると、判断基準である[5][6]が大きくフォーカスされてくるわけです。
一方で、これによって、セグメント(A)、(E)、つまり、透明な市場を期待している投資家や企業は離れていく可能性があります。特に海外投資家にとっては、日本の株式市場はOne of themですから、他の市場で投資すればよいだけの話です。
東証は誰を顧客とすべきなのか、これは単にオリンパス社の問題だけでなく、東証の提供価値は何なのか、将来の成長戦略をどう描くのか、を問われている深い議論なのだと思います。
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