シナプス後藤です。

先日、東京大学が秋入学への移行を検討している、というニュースが話題になりました。
Yahoo!ニュース(読売新聞):東大が秋入学移行案…春入試維持・年度内に結論

東大によると、昨年5月現在の東大の学部学生(約1万4000人)に占める留学生は276人(1・9%)で、米ハーバード大(10%)など海外の有力大に比べて著しく少ない。海外へ留学している東大の学部生も53人(0・4%)にとどまっている。


とのことで、東京大学も国際化のためにハードルになっていると考えられる入学時期をずらす選択肢を考えている、という事でしょう。

問題は、日本社会が4月を起点に動いている、という事です。秋入学にする、という事は、高校を卒業してから入学までの半年間と、大学を卒業してから入社までの半年間を無駄に過ごす可能性があります。一部の企業では通年入社を受け入れるようですが、多くの企業は対応しにくいでしょう。「採用するだけ」なら簡単なのですが、例えば、新入社員受け入れの研修や制度整備、あるいは採用人数の調整等、一括でやってしまった方が効率が良い、ということが多々あるからです。

このように、皆がやっているから効率が良い、という状況をネットワーク外部性(ネットワーク外部経済性)、と言います。
例えば、電話のように「皆が使っているから通信インフラのコストが安くなる」という状況ですね。
Wikipedia:「ネットワーク外部経済性」

近年、このネットワーク外部経済性をベースとしたビジネスモデルが増えてきているように感じます。たとえば、Facebook等のSNSは皆が使うから便利、という状況になってきています。

デファクトスタンダード、というのはこのモデルですね。
例えば、過去にビデオの規格争いで、VHS、ベータ戦争、というのがありました。VHSを推す日本ビクターとベータを推すソニーの争いでしたが、最終的には多くのメーカーの支持を受けたVHSに軍配が上がりました。なぜ、VHSが勝ったのでしょうか?VHSの方が画質が優れているから?違います。皆が使っているからです。
消費者はビデオを選ぶ時、ソフトが多い規格を選ぶでしょう。そして、ソフトメーカーはデッキが多い規格を選びたいはずです。後から参入するメーカーはユーザが多い規格を選択するはずです。このように、「皆が使っているから」という理由で選ばれるビジネスモデルがネットワーク外部経済性モデルですね。

例えば、PowerPointを多くの人が使っている理由は何でしょうか?最も素晴らしいプレゼンテーションが作れるから?違います。皆が使っているからです。
皆がPowerPointを使っているので、作成した後の共有がしやすい、あるいは、皆で加工・修正しやすいので便利なのです。

例えば、一般にPCで使われるキーボード配列(QWERTY配列)は、なぜ多くの人が使っているのでしょうか?最も入力しやすいから?違います。皆が使っているからです。
皆がQWERTY配列を使うので、慣れてきます。慣れてくると、他のキーボードにスイッチするのが大変になるため、いつまでもこのキー配置が使われるわけです。


ただ、このモデルもたまに破られる時があります。たとえば、今、SNSと言えば(特に、世界全体で考えると)、FacebookがNo.1です。SNSは皆が使っていることが重要なので、Facebookを今後も使う人が増えるのでは、と考えられます。しかし、以前、No.1はMySpaceだったのです。本名でやる、顔写真をつける、というようなことをベースとして様々な機能やルールを保持したことからFacebookが便利だと思った多くの人がスイッチしたわけです。

東京大学は、日本だけを考えれば4月始まりの方が圧倒的に便利です。ですが、世界を考えると秋入学の方が便利である、という意見が増えてきている、という事なのでしょう。
すぐにスイッチしないとは思いますが、東京大学がスイッチしてそれが便利だと分かれば、多くの大学がスイッチし、最後には高校以下の学校、企業も秋始まりになる可能性があります。

環境変化がビジネスモデルに影響を与える、そういう時代ですね。

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