先日、知人から個人的な贈り物を頂きました。食器だったのですが、残念なことに開けてみると割れてしまっていたため、販売店に連絡して交換をお願いしました。

そのときの対応が非常に考えさせられることがあったので、記載したいと思いますが、特定企業の経営や事業などの是非を示すことを意図しているものではない(ケース文の注釈ですね笑)ので、実名は伏せておきますね。


品物は、宅配便で送られてきたのですが、その宛名書きを見ると、有名百貨店の中に入っている某海外ブランドの販売店で、そこで知人が「贈り物」ということで購入し恐らく指定業者になっている宅配便が使われたようです。


マーケティングの観点から位置づけると、
・企画、製造:海外ブランド
・販売:有名百貨店の販売店
・配送:宅配業者
というバリューチェーンにのってきたわけですね。

■対応の経緯

さて、販売店の方との電話のやりとりは次のような感じです。
(かなり抜粋しています。)
私  :「そちらから送られてきたものが割れていたのですが?」
販売店:「確認して折り返しますので、お待ちください。」 ・・・(A)
(待つこと10分ほど)
販売店:「宅配業者(企業名)が運んだときに割ってしまったのかもしれません。こちらではしっかりと包装しているのでこういったことは今まで無かったのですが。宅配業者のドライバーと連絡がつかないので、30分ほどお待ちいただけますでしょうか?」 ・・・(B)
私  :「私はどうすれば良いのでしょうか?返品や交換になるのですか?」
販売店:「交換いたしますが、交換には着払いでお送りいただくか、お店にお持ちいただけませんか?」 ・・・(C)
私  :「宅配業者に確認しているのであれば、回収に来て欲しい旨も伝えていただけませんか?」
(待つこと30分ほど)
販売店:「宅配業者に確認したところ、配送時に割ってしまったようです。誠に申し訳ございませんでした。割れていないものを新たにお送りしまして、その際に宅配業者に割れてしまったものを渡していただけますか?」
私  :「時間指定したいのですが。」
販売店:「宅配業者の指定時間が決まっていまして、*時〜*時の間となってしまいます。特定の時間指定は出来かねるのですが。」 ・・・(D)
私  :「事情は分かりますが、こういう状況ですので、*時と指定して頂けませんか?」
販売店:「分かりました。」


この状況で、皆さんがこのブランドのマーケティング・マネジャーだったら何を考えますか?

私はこの手のやりとりは余り腹を立てないほうなので、上記も冷静にやりとりしていました。ですので、特に不満も無いのですが、人によっては怒り出す、所謂「炎上状態」になってもおかしくない対応ではないでしょうか?

■いったいどこが問題だったのでしょうか?

(A)〜(D)で気になった点があるのでそれぞれ記述します。
(A) まずは謝罪?

一般的に、このような状況下ではまず顧客の感情的な不満を取り除く必要があると思います。状況が見えない中で安易な謝罪は問題が起こるケースも勿論ありますが、余計な約束をせずに「申し訳ありません、直ちに状況を確認しまして」というところから入った方が良いのではないでしょうか?
業務手順としては間違っていないのですが、感情への配慮がなかったのが非常に気になります。

(B) 責任は誰に?

恐らく、担当の方は「悪いのは宅配業者でウチじゃない」と考えていたのではないでしょうか?勿論、ミスは宅配業者でしょうが、それを使っているのは販売店である、と言うこと、顧客にサービスを提供しているのは販売店である、と言うことを忘れてはいけないでしょうね。
言い換えれば、宅配業者に確認しようがしまいが、顧客には関係なく、その場で対応を示した方が良いのではないでしょうか。

(C) 誰の視点での判断なのか?

このやり取りは、顧客の手間を考慮に入れていません。顧客側にもミスがある(例えば、買ってみたらサイズが違ったので交換して欲しい、など)のであれば良いのですが、基本的に問題は全て販売側(宅配業者も含めて)にあるため、余計な手間をかけさせる、と言うことがマイナスである、と言うことを考慮すべきだと思います。勿論、無料交換だし、「着払いと言うことはその分こちらがマイナス」という意見を持ちたくなりますが、それ自体は顧客には関係の無いことなのですね。

(D) 間違った前提条件

多くの宅配会社は、運送効率をベースに動いていますので、細かい時間の指定ができなくなっています。もし、細かい時間の指定をしようと思うと、運送コストはもっと上がってしまうはずですね。ですので、昔に比べるとかなりの選択肢にはなっていると思いますが、それでも「午前中」とか、「*時〜*時の2時間の間」などかなり広い枠になってしまうわけです。
ただ、それはあくまで「企業が運送効率をベースにして動いている」ということであって、今回のような特別な対応に適用すべきではない問題だと思うのです。


この問題の難しさは、「販売店はちゃんとやっている」ということに尽きると思います。恐らく電話に出た方も、「ウチのせいじゃない」と思いながら話しているはずですね。ですが、企業全体から見たら、顧客はバリューチェーン全体から価値を受け取ります。言い換えれば、どこかの機能が大きなミスをした場合、顧客が受け取る価値はマイナスになってしまうこともありうるということです。

■つまり気になること

私がとても考えさせられたのは、この問題を解決するのが極めて難しいな、と感じたからです。前述の「海外ブランドのマーケティング・マネジャー」は日本にいないかもしれません。そのマネジャーがどこか知らない土地で起こっている販売店の対応と宅配業者のミスを想像し、手を打たなければならない。
販売店のスタッフは「バリューチェーン」という言葉を勿論知らないでしょうし、目の前にいるお客さんに売ることは出来ても宅配業者のミスを問い詰めて特別な対応をさせる、と言うことまでは思い至らないだろう、と言うのが通常でしょう。

ですが、こういった「些細な突発的事象」が将来のロイヤル顧客を作るかもしれないし、顧客の離反を進めてしまうかもしれない、と言うのも事実なのでしょうね。