シナプス・マーケティング・カレッジ☆公式ブログ

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クレイトン

クリステンセン教授の話を聞く

シナプス後藤です。

昨日、HRD Japan 2012のセッション「How to Create New Growth Business」に参加してきました。
HRD Japanとは、人材開発系のカンファレンスで、その中でもこのセッションは目玉の一つだと思いますが、イノベーションのジレンマで有名なハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授の講演でした。
ただ、残念ながらテレビ会議のセッションで、その代わり、一橋大学イノベーション研究センター センター長の米倉誠一郎教授がファシリテーターとして参加されていました。

イノベーションのジレンマは、「大企業がかかる不治の病」をマネジャーのスキルの問題ではなくメカニズムとして説明した優れた本です。イノベーションに関する理論はこの「破壊的イノベーション」をきっかけに大きく進展したのではないかな、と思います。

講演は、イノベーションのジレンマで書かれている内容をなぞった様なものではありましたが、本人の口から聞く、と言う意味でとても意義深いものでした。私からすると、「あぁ、やっぱりそうだよね」と言う感覚です。

ざっと私のメモを見ながら起こしてみました。
他にもいくつか議論はあるのですが、纏めやすいポイントを纏めてみました。

■破壊的イノベーションとは?
・破壊的イノベーションとは、「劣悪な品質のものが低利益率の市場に参入し徐々に高品質・高利益の市場を犯していくこと」である。
 −革新的な技術によって市場を破壊する、という意味ではない
・例えば、鉄鋼業界では、一貫型工場から、minimill(10m程度の路で廃鉄等から鉄を作る)へシフトをして行ったメカニズムについて説明
 −一貫型の工場は低粗利(7%)の鉄筋コンクリート市場から、より高粗利の自動車向け等を市場として占有していた
 −minimillが生まれると、低粗利の鉄筋コンクリート市場に参入した。(コストは20%安かった)
 −そのため、一貫型は「より儲かる市場へシフト」した→資本効率は高品質の市場の方がずっと高い
 −minimillのプレイヤーは小規模企業も多かったが、戦略性が無かったため、一貫型工場が鉄筋コンクリート市場からいなくなった瞬間、価格競争に陥った。・・・つまり、戦略性があったわけではないことを意味する
 −価格競争に陥り、儲からなくなったminimillプレイヤーは次の市場としてAngle Iron(山形鉄材)へ参入した。(粗利率12%)
  →以後、一貫型工場はドンドン高品質の市場にシフトし、最後には市場から駆逐される

※Sheet Steel(板金、金属薄板。自動車等に利用される)の粗利率は25-30%であり、より高品質にシフトする方が資本効率は高い

この本質的な意味は、マネジャーの能力がないから、ではなく、マネジャーの能力が高いがゆえに起こったことであり、大企業の宿命であると言う事。

■破壊的イノベーションがアウトソーシングでも起こる
 DellはAsusTek(台湾のPC製造メーカー)に次のように殺されて行った
 1) AsusTekは回路基板メーカーだった
 2) Dellに対して、マザーボード製造のアウトソースを提案
  Dellは本業ではない(利益率低い)と判断し、マザーボード製造を委託
 3) 次に、アッセンブルのアウトソースを提案
  同様の意思決定をし、サプライチェーンとロジスティクス、製品デザインのアウトソースを提案
  Dellは「ブランド」を本業として製造部分を委託
 4) AsusTekはBestBuy(小売)に対して、Brandを提案
  「小売はDellブランドを売らなくても良いのではないか?」

■なぜ、大企業が破壊的イノベーションに投資しないのか?
 New Financeの宗教(宣教師はMBA教授やVC、ファンドのパートナー)が資本効率を高める経営を推進した。
 →RONA(Return on Net Assets)を中心とした評価基準
  そのために、「Assetを減らして儲かる市場に集中する」という意思決定が推進されるようになった

■破壊的イノベーションに対する解決策
 ※米倉教授は、「そもそも大企業にとって不治の病なので、解決策は無い。  スピンアウトすべし」と言う主張ですが、、、
 1) 国家レベルでは長期の資金や施策に対する税制緩和によって、今の評価基準でも投資されやすい状況を作ることは可能
 2) 企業内では「別の事業部隊」を立ち上げる必要があるIBMはメインフレームが本業だったころ、PCの部隊は距離的に離れた場所に作った。既存の事業の干渉を受けないようにする必要がある

なお、New Financeに対して、新しい評価基準が必要、という指摘に対して、クリステンセン教授は解を持っていませんでした。
つまり、今のところは、破壊的イノベーションを大企業内でコントロールする評価基準は存在しない、と言う事で、資本効率を追いかける限り、イノベーションのジレンマが大企業を殺し続ける、と言う事ですね。


クリステンセン教授の主張の面白いところは、これは組織論、文化論ではなく、戦略論であり、メカニズム論である、と言うところでしょうか。
破壊的イノベーションに対して、組織や文化の形態は関係ない。一般的に言われる、「日本企業ではイノベーションが生まれにくい」と言うような文脈とは関係なく起こる話です。特に経営者が経済合理性について誠実であればある程、イノベーションのジレンマにはまる、と言う事です。


誤解のないように書いておくと、「破壊的イノベーション」は幾つかの条件がありますので、破壊的でないイノベーションもたくさんあります。たとえば、携帯電話にとってのiPhone、MySpaceやMixiにとってのfacebook、LINEは破壊的イノベーションの定義からは外れるように思います。
これらは競合サービスとして優れていた、と言う事ですね。

典型的な破壊的イノベーションは、「品質が低く、価格も安い」という状況で上述の鉄鋼業界はまさにそれに当てはまります。

「イノベーションのDNA」をちょっとだけ読む

シナプス後藤です。

ちょっとしたイノベーションマニア、のようになっておりますが、「イノベーションのジレンマ」で破壊的イノベーションを提唱したクレイトン・クリステンセン教授の新しい本が出たので早速買ってしまいました。
タイトルにちょっとだけ読む、と書いたとおり、まだ一章しか読んでおりませんが、雑感を、、、(近々に読みたいな、と思っていますが、、、)
イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)
イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)

クリステンセン教授の今までのシリーズは、経営戦略としてのイノベーションの実践と、破壊的イノベーションへの対抗、というような切り口で書いていたように思います。それが今回は一変して「イノベーター」(イノベーションを起こす人)に焦点を当てます。個人としてのイノベーションの能力がどこにあるのか?

私自身は、イノベーションを「新しいものの見方や考え方で市場で成功すること」と定義しています。ここには二つの要素があり、「新しいものの見方や考え方ができる」という創造力に関することと、「市場で成功する」という実行力に関することが組み合わさっている、と言う事です。
この中でもイノベーターの特徴的な要素は創造力の部分にあります。この創造力について、こう書かれています。

一般に、新しいアイデアを生み出す能力は、純粋に認知的なスキル、つまり頭の中だけで完結するスキルだと思われている。しかしわれわれの研究は、革新的なアイデアを生み出す能力が、知性だけではなく、行動によっても決まる、という重要な洞察を示している。これは誰にとっても喜ばしい知らせだ。誰でも行動を変えることで、創造的な影響力をますます発揮できるのだから。


一般的に経営理論と言うのは、「一部の天才だけが為し得ること」という考え方に依りません。優れた示唆と言うのは、「誰でもやれば出来る」という事を解明することです。この本も、イノベーターになるのは才能ではない、行動である、と述べています。

上記で、「新しいものの見方や考え方ができる」と書きました。はっきり言って、それこそ天才でもなければ自分の中から勝手に「新しいものの見方」が出てくることはないでしょう。我々凡人は自ら生み出す事が出来ない、と考えた方が良いのです。ではどうするか?そう、どれだけ、自分が知らないモノに触れられるか、つまりどれだけ行動するかに依存する、と言う事です。
それがなぜ新しいものの見方や考え方になるかと言うと、組み合わせはオリジナリティが高い可能性が高いからです。違うものの見方ができる人が10人いたとします。AさんがBさんの見方を真似てもオリジナリティはありません、が、AさんとBさんの見方を組み合わせるとオリジナリティができます。つまり、10人いれば、90通り(重複除いて)の見方が出来るのです。

イノベーターと呼ばれる人たちはこの新しい組み合わせの発見を行動によってになっている、と言う事なのかもしれません。

一方で、悲しい事実も書かれています。

イノベーティブな企業は必ずといっていいほど、イノベーティブなリーダーが統率している。もう一度言おう。イノベーティブな企業はほぼ必ず、イノベーティブなリーダーが陣頭指揮を執っている。


つまり、「イノベーションを起こせ」という人がイノベーティブでなければ、多くの場合イノベーションは起きない、という事です。

まだ全てを読んでいないので上記の解が書かれているかは分からないのですが、個人的にはそんなことはないだろう、というのが実感値です。イノベーションの管理は失敗の管理、ではありますが、管理可能だと思います。イノベーターをマネジメントする、というような形になるのかもしれません。

第一章を読んだレベルで感じる全体のまとめは恐らく次の点でしょう。
革新的なビジネスアイディアには、(1) 勇気、(2)行動的スキル、(3)認知的スキル、が必要である、という三つです。
(1) 勇気
 イノベーションは新しいものの見方や考え方であるので、「現状とは違う」と言わなければいけない、という勇気が必要です。また、特に新規事業のようなものは元々成功率が低いので、「リスクを取って」チャレンジする勇気が必要です。

(2) 行動的スキル
 行動的スキルには4つある、と言います。それが(a) 質問力、(b)観察力、(c)ネットワーク力、(d)実験力、です。
 (a) 質問力:現状を否定し、本質的な問いを発する力ですね。前提を疑う力、といっても良いかもしれません。
 (b) 観察力:世の中を広く見渡し、新しいモノを見ながらヒントを発見する、その力です。
 (c) ネットワーク力:いわゆる、人脈、ですね。新しいものの見方を他者に求めるなら紹介が一番です。
 (d) 実験力:プロトタイプやモックアップ等、とにかく早く形にすることで、よりアイディアを具体化させるアプローチです。
 これらは、全て新しいものの見方の切り口をいかに早く、効率的に発見するか、という事ではないかと思います。

(3) 認知的スキル
 そして、三つ目が認知的スキル、すなわち、見たものを組み合わせる能力です。それが誰にも発見できないものであればあるほど、そのアイディアがイノベーティブである、ということです。


なかなか学ぶべきところがありそうなので、もう少し読み進めてみようかと思います。

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