シナプス・マーケティング・カレッジ☆公式ブログ

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マーケティング:一般

「ビジネスマンのための『行動観察』入門」を読んで思う事

シナプス後藤です。

近年、行動観察を主体とした調査手法がちょっとした流行になっているように感じます。生活者を見ることで、何か新しいニーズを発見できるのではないか、と言う事ですね。

日本では、大阪ガス行動観察研究所が結構名前としては出てくるようで、恐らく所長の松波春人さんがかなり先進的に取り組みをされているからなのではないかと思います。


先日、興味があって「ビジネスマンのための『行動観察』入門」読んでみました。
ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

内容としても意味がありそうですし、読み物としても面白いので本としてはお奨めです。
ただ、この本は「行動観察とは何か?」と言うのを紹介するものですので、実際に行動観察をやるためにはもっと専門書が必要になるようには思います。


行動観察が重要になってきているのには背景があります。これはイノベーションが重要になってきている、と言う事も同様です。行動観察を用いた調査手法と、従来型(と言ってよいかどうか分かりませんが)のアンケートや対面インタビューを主体とした方法との本質的な違いは、「ニーズを回答者が明示できるか」もしくあ「調査する側が十分な仮説を立てられるか」という事に起因します。ユーザの声が直接ニーズに繋がるようなありきたりなニーズはもやは差別化要素にはなりえない、と言う事です。
例えば、今、電気自動車に求められるのは長距離走れること、充電を気にせずに走れることです。そのために電池に関連する各社がしのぎを削っています。
或いは、パソコンはどうでしょう?多くのユーザが基本的にスペックには満足しており、より早いスペックは「あればよいけど、買うまでもない」と思っている方が多数なのではないでしょうか?
つまり、明示されたニーズは実現が難しく各社がしのぎを削っているか、そもそも強い欲求がないのです。

では、ニーズは無いのか?
あります。現代でも100%幸せで理想的な生活をしている人がほぼいないので、必ずニーズはあります。ただ、それに企業側が気付いていないだけなのです。
しかも、たちの悪いことにユーザ自身も何に困っているのか気付いていないことが多い。

新しいニーズを発見するのが難しいからこそ、新しい手法が必要になってきています。
そういった見えないニーズを発見する手法の一つが行動観察です。


本の中では、行動観察の事例を紹介しながら、どのように進めるのか、どんな内容が見えてくるのかを紹介しています。
ワーキングママの事例等は、なるほど、見ないと分からない非常に深い内容になっていますね。これの重要な点は「見ないと分からないが、(見る人が)見れば分かる」ことが上がってくる、と言う事でしょう。

シナプスでも営業プロセスの可視化や成功要因の明確化等はコンサルティング・プロジェクトとして取り組むことがあります。その中でもこういった同行による観察を入れていくことでより成果につながるのでは、と思います。

参考にしたい分野ですね。

競争優位と競争劣位

シナプス後藤です。

マーケティングや競走戦略を考える時、「競争優位性」という言葉がよく出てきます。これは、競合他社と比較して自社が競争上優位なポジションにあるか、あるいはそれを獲得できるかどうかどうかの尺度です。
例えば、
「このビジネスは自社に競争優位性があるか?」
等と使います。

競争優位性を考える、とは、自社が他社に勝てる理由は何か、を考えることです。多くの場合は、顧客に支持される要素が他社より優れているか、または、競合他社に比較して低コストが実現できているかどうか、のいずれか一方、或いは両方になります。

さて、競争優位性という言葉そのものは極めて簡単なのですが、「何が競争優位性を構築する鍵になるのか?」は極めて難しいテーマです。
勿論、構築するとなれば「あらゆる企業が努力している分野なので簡単に実現できるはずがない」ため当たり前のように難しいのですが、既に優位性を保持している自社や他社を分析するだけでも難しいケースが多いです。

難しさの原因は、顧客に支持される理由や競合他社より低コストが実現できる理由が一つではないし、競合他社も複数存在するので、「誰に勝っているのか?何が勝っているのか?」の組み合わせが多数想定されることにあります。


競争優位性の観点や分析方法は様々な本で紹介されていますが、余り明確に書かれていないのが、「競争劣位」という概念でしょう。
私が初めてこの言葉に触れたのは、J.B.バーニーの「企業戦略論(上)」でした。
企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続


競争優位性の分析は、「どうやって勝つか?」という勝つための要因を探す、考えることではありますが、勝っている要因は多数あります。ただ、分けて考えたいのは、「負けないための要因」と「勝つための要因」は異なる、と言う事です。
言いかえれば、
・業界の標準的な利益を得るための要素

・業界で1位になる、あるいは標準以上の利益を上げるための要素
は異なる、と言う事です。

業界の標準的な利益を得るための要素を持っていなければ、そもそも勝てるはずがない、これが競争劣位の状態です。


例えば、最近、色々と動きの早いソフトバンクを中心とした携帯キャリアのエントリーを書いていますが、携帯キャリアにとって、「周波数帯」と言うのは極めて重要なリソースです。これがなければ、業界標準的な利益を得ることがそもそも難しい。
もっと言えば、携帯キャリアにとって、周波数帯を持っていなければ、参入することすらできないわけです。
一方で、このリソースは「持っていればよい」というものでもない。勝つためには契約者数の獲得や、魅力的な端末の提供等が必要になってきます。
参考:
「M&Aで何を買う?・・・ソフトバンクのイー・アクセス買収から競争優位性を考える」
「携帯キャリアのKSFが変化したこと」

競争優位性を考える際には、「競争劣位」と「競争優位」を分けて考えることでよりシャープな分析が出来るのではないでしょうか。

社内へのダメ出しは顧客起点であるべきだ

シナプス後藤です。

当社はビジネスパーソン向けにシナプス・マーケティング・カレッジを開催しています。多くのビジネスパーソンにマーケティングや関連スキルを身につけて、ご活用頂くための実践的な講座にしています。
一般の方が個人でお申し込みされることを想定して平日の夜、もしくは土日に開催しています。

さて、そのマーケティング・カレッジでは、講座の状況によって長引く場合があります。長引いてしまうほとんどは、受講生同士のディスカッションや受講生からの質問が活発になって結果的に終わらなくなってしまうというのが原因のようです。(「家弓正彦の仕事塾」を除く(*1)と、定期的に開催しているプログラムは、設計上、講師が長々と話していたら延びてしまった、と言う事はほとんどありません。)
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先日もオフィスで仕事をしていたらアテンドをしているスタッフが予定より遅く貴社しました。マーケティング・カレッジは外部の会場を借りて開催していることも良くあり、そこから帰ってくるのが遅かったと言う事です。


その日は講師が当社代表の家弓が勤めており、恐らく上述の通り、受講生ディスカッションが盛り上がってしまったものと思われます。
ですが、建前上は講師にファシリテーションの責任があり、上司だろうが誰だろうが、ダメなものはダメなので、ネガティブフィードバックはすべきです。

ではどのようなフィードバックをすべきなのでしょうか?
1) 時間通りに終わらないと顧客の予定が狂ってしまう
2) 借りている外部会場に迷惑がかかる
3) 従事しているスタッフの人件費コストがかかってしまう

一見すると分かりやすいのは2)です。これはどこの会場でも運営者に対してクレームをつけるからで、場合によっては「追加フィー」と言う事もあるでしょう。
次にわかりやすいのは、3)ですね。コストがかかるのはどう考えてもかかるものなので、「なんとかせい」と言いやすいとは思います。

ですが、私は本来的には1)以上の理由は無いのでは、と思っています。
長引く状況の場合には、その時担当していた当社代表だけでなく多くの講師が、「このディスカションを継続すべきか、終了時間を優先すべきか」と言う選択を意思決定します。当社の講師をお願いする方は基本的にファシリテーションが出来る方ですので、「継続すべき」と判断して実行しているのだと思います。学習効果や満足度を考えると中途半端に終わらせるよりもより良いだろう、という判断ですね。
多くの場合、その判断は間違っていませんが、一方で「早く終わらせないと顧客の予定が狂う」事のリスクを考えている講師は意外と少ないのも事実です。それは受講生の多くは、「伸びてくれればお得感がある」と考えるからです。
どういう事かと言うと、「顧客満足のためにやっているのに、会場の都合でやめろとはおかしいのではないか?」と言われた瞬間に、スタッフサイドとしては回答のしようが無くなるわけです。

様々な出来ない理由を考えるのは簡単ですが、それを乗り越えて顧客に価値を提供するからビジネスとして意味があるわけです。つまり、価値提供者に対する判断基準は「顧客にとって価値を提供できるか」で考えるべきだと思うのです。

だから、上記の講師に対するフィードバックは、「やっている事は分かるが、それ以前に終了時間も顧客との約束であるから守って欲しい」という話をすべきなのではないでしょうか?
時間を守り、それでいて十分なディスカッションの場を作り出す。こういったトレードオフを両方とも追求する姿が正しい「顧客視点」のあり方だと思います。


*1:「家弓正彦の仕事塾」は、プレゼンターである家弓が毎回オリジナルコンテンツを作成して実施しており、時間設計より内容の充実を重視しているため、延長してしまうケースが良くあります。

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「これはあなたのための商品ではない」

シナプス後藤です。

ターゲティングとは、自分たちの商品・サービスを提供する顧客を絞り込む事です。つまり、ある特定顧客層向け「だけ」が満足するような商品・サービスを提供する、と言う事です。
今更言うまでも無い話ですが、ターゲティングは重要です。
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先日、知人と話している際、ある飲食店を指して「あそこの店はまずい」と言っていました。
どうも話を聞いていると、そのお店は女性向けの味付けを指向しているようで、味のパンチ、ボリュームのパンチ共に、知人には足りなかったようです。
これは典型的なターゲットと顧客のミスマッチパターンです。


さて、一方でこれも今更言うまでもない話ですが、インターネットが広がったことで情報拡散力も強くなっています。特に、飲食等の一般的な消費者向けサービスの情報拡散が強いようです。そうなると、どうなるか?
上記の知人のような人が、

「あそこの店はまずい」

と書き、その情報が拡がっていくと言う事です。

事実を正確に書くと、「あそこの店の料理は、30代男性の私の口には合わなかった」となります。が、そんな都合のよい書き方をすることはまずなく、自分と合うか合わないかを「おいしい」「まずい」の基準にします。
そして、「俺がまずいと思うのだから、誰にとってもまずいだろう」と考えて、情報を拡散するわけです。
※ライターや真面目にブログを書いている方は、ちゃんと切り分けて書かれていますが、そういう方はごく一部です。


ターゲティング活動の多くは、ターゲットとなる顧客層に対して「これはあなたのための商品です」とメッセージを投げかけます。4P全体で「あなたのための!」とやります。
これはこれで正しいのですが、最近、もう一つやらなければならないことがあるのではないでしょうか。

それが、「これはあなたのための商品ではない!」というメッセージです。

例えば、昨日書いたスカイマークの件も同じではないでしょうか。「スカイマークは、サービスよりも価格を重視するお客様『だけ』に提供するもので、高レベルのサービスを求める方はどうぞ他の飛行機をご利用下さい」というメッセージが多くの方に伝わっていないため、本来ターゲットではない人達から「如何なものか」となって言うクレームが上がってしまったものと想像します。


ターゲットを明確にしている企業の多くは、明確にしているが故に、ターゲット外の人たちから「これは私のための商品ではない」と認識されることは多いと思います。特に、アパレルなどは、何となく自分と同じような人たちが店内にいないと居心地が悪くなったりしますよね。また、高級レストランでドレスコード(厳しければフォーマル、多少ならネクタイや上着等を来ていないと入店を認めないこと)があれば、「きちんとしない人は顧客ではない」と明示していることになります。

ただ、ターゲットを明確にすればするほど、裾野の顧客が「間違って使ってくれて、ファンになる」という可能性を捨てることになってしまうため、「別にあなたも買っていいんですよ(ターゲットではないけど)」と言うスケベ心を出す事になります。
こうなると、ターゲット外の人が購入し、「まずい!」という情報発信源を作ることになってしまうのです。


情報が伝わりやすい状況だからこそ、「これはあなたのための商品ではない」というメッセージを伝えることも重要なのではないでしょうか?

蕎麦屋のアンケートで考えるアンケート設計と結果分析のポイント

シナプス後藤です。

昨日、蕎麦屋のアンケートについて書きました。
薬味ネギアンケート

このアンケートは題材として面白いのでもう少し書こうと思います。
なお、このケーススタディは事例を勝手に分析して「アンケートの考え方」を考える事を目的にしており、経営判断の適否を評価するものではありませんし、書いてある内容が事実として正しい事を保証するものではないことを付け加えておきます。


昨日書いたアンケートは次のようなものではないかと推定されます。

■設問:

当店ではネギを入れ放題にしていますが、適量以上に入れるお客様がいらっしゃるようです。今まで安全な国産品を用いてきましたが、最近のネギの原価高騰により今までの価格で提供できなくなる可能性があります。
ネギの入れ放題に関して、どのような対応を望まれますか。次の三つの選択肢から選んで下さい。
1) 価格据え置き、中国産を入れ放題
2) 中国産は口にしたくない、国産品を適量店員が入れる
3) 値上げをしてもかまわない、国産品を入れ放題


■結果:
結果は、2)が多く、続いて3)、1)はほんの少数派。



このアンケートと結果を見て皆さんはどのように感じますか?

私がこのアンケートを興味深い、と思ったのは、
・アンカリング
・二重の意味を持つ設問選択肢
・分析のミスリード
の三つを説明できそうだと思ったからです。


アンケートは、回答者の本音を引き出すのが目的ですが、その「本音を引き出す」というのがとても難しい。こちら側が質問の仕方を間違えると、回答者は、きちんと「間違った回答」をします。
例えば、消費税増税を個人として賛成か反対かを聞きたい時に、「消費税増税は必要だと思いますか?」と聞いたとします。そうすると回答者はたとえば「必要だと思います(但し、個人的には増税は嫌だし選挙になれば反対すると思うが今の国家財政を考えると遠い将来として考えれば。)」と回答します。この(カッコ)の中を答えてくれないので、こちらは「あぁ、この人は増税しても怒らないんだな」と思ってしまいます。

別に回答者が嘘を付いているわけではなく、正直に回答しているのですが、文脈が読めないために結果的に間違った回答になってしまうわけです。


さて、上記の設問は私が作文で付け足した事も含め、アンケートとしてミスリードしやすい状況を作りました。つまり、「国産品は安全」「中国品は安全で無い」という前提をベースに質問をするわけです。
言いかえれば、「安全な食品をお金を出して求めるか、安全でない食品をタダで求めるか」という前提を植え付けているのです。この質問をすると、「普通の安い中国産のネギ vs 普通の高い国産のネギ」という対立にはなりません。
つまり、高い価格は安全の価格である、それにお金を払いますか?という議論にしているのですね。
この手の議論であれば、「おいしい国産ネギとまずい中国産ネギ」という対立にも出来ます。ただ、残念ながら、アンケートに回答する人達はネギを食べているので、「まぁ別に上手くもないがまずくもないだろう」と想定しているので、中国産のネギでも良いか、という回答に流れる可能性があるわけです。

ということで、安全と言う対立は分かりにくいがゆえに分かりやすく結果が出るのかもしれません。


二つ目は、選択肢の話です。
もともと、選択肢に複数の意味が含まれていますから、回答者が何を回答しているのか分かりにくい状況ではあります。
「適量で良いのか、入れ放題が良いのか」という質問と「安い中国産が良いのか、高くても国産が良いのか」と言う事の二つの事を聞いているのです。
正確に聞くなら、
・入れ放題は必要か?
 ・Yes:お金を払って国産?タダで中国産?
   −国産・・・・・・・(A)
   −中国産・・・・・・(B)
 ・No:国産?中国産?
   −国産・・・・・・・(C)
   −中国産が良いか?・(D)
という構造ですね。
恐らく、今回のアンケートは、(D)が一番多かった、という結果ではないでしょうか?だから、同じような意味合いと取れる、(2)が多かったわけです。


と考えると、今回の結果は多くの人が「ネギをたくさん入れようと思っていない」と言う事ではないかな、と思います。だから、国産と中国産を比較したらそれは国産で良いだろう、と。


以上を纏めると。
アンケートを取る際には、回答者が「普通に考えたらこういう状況ではこう回答するよね」という検証を事前に行っておく必要があるわけです。
質問分も選択肢も。もし、あまり考えていないアンケートをとってしまったら、基本的には使い物になりませんが、敢えて使うとすれば、「どう勘違いされている可能性があるか」ということを考えておく必要があります。



なお、全く事情は分からないので推測になりますが、このアンケートを取る人は上記のような事は分かっていてやっているような気がします。
昨日書きました通り、結果としては良い打ち手につなげていますので、目的は達成できているのではないかな、と思います。

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