今月の「今この人に聞く!/マーケティング・インタビュー」
のゲストは、このコーナーには珍しい?保育園の経営(園長)をさ
れている「玉居子 高敏」(たまいご たかとし)氏をお迎えし、
地域一番店(園)になった、その戦略についてお伺いしていきたい
と思います。

*保育園の名称については諸事情により伏せさせて頂きます。

【今月のゲスト】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

〜玉居子 高敏(たまいご たかとし)〜

(越谷市某保育園園長)大学卒業後、不動産コンサルティング会社
を経て保育園の開業コンサルタントに転職。
まったく未知の業界に飛び込んで悪戦苦闘をしながらも、保育事業
の社会性やおもしろさに魅かれ、自ら開業することを決意。
その後、経営する保育園を地域NO.1保育園へと育てる。
自身でも、NPOランチェスター協会認定インストラクターの資格を
取得し、保育経営と並行して、同じように苦しみを抱いていると思
われる中小零細向けのコンサルティングをすべく「弱者逆転研究所」
を設立。
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*テーマ:『地域NO.1保育園への戦略とは?』

◆インタビュー◆──────────────────────

【名和田】さっそくですが、基本的なことから教えてください。
そもそも、保育園業界の仕組み?とはどのようになっているのでし
ょうか?


【玉居子】ハイ。保育園は通常、自治体などから園児を紹介され
てお預かりする場合と、直接保護者の方とやりとりをして、自治体
を通さずにお預かりする場合があります。

また、自治体から保護者の方に、保育料補助が出るパターンと出な
いパターンがあります。
利用形態も定期的にお預かりする『月極め保育』と、不定期利用の
『一時保育』とがあります。

利用形態については、駐車場の月極め利用と一時利用のイメージに
近いものだと思って頂けるとわかりやすいと思います。

当園に関していうと、保護者の方に補助が出るパターンと、出ない
パターンの双方の利用形態があります。
また月極めと、一時保育の利用についても双方あるといった形態で
運営しております。


【名和田】なるほど。良くわかりました。
ところで、玉居子さんは、不動産コンサルから保育園開業コンサル
を経て、ご自身が実際に保育園の経営者になってしまったという、
変わった経歴をお持ちですが、その保育園にマーケティング戦略を
持ち込もうと思ったのは、やはり原点がコンサルだったからでしょ
うか?


【玉居子】確かにそれも有るかも知れませんが、正直独立後、経
営の課題と向き合いながら苦悩する日々を過ごすしていたんです。

独立をして感じたことですが、自分自身の中で、明確な判断基準と
なるものをもっていないために、不必要な部分での悩み・苦しみが
多かったというのも有りました。

その中で、いろいろなマーケティング分野について調べてみたとこ
ろ、ランチェスター戦略というものに出会いました。
この理論は、非常に明確でかつ実践的な指針と方向性を導いてくれ
るものだと強く感じ、この戦略を会得しようと心に決めて学び始め
ました。


【名和田】具体的にはどのような課題意識や悩みだったのですか?


【玉居子】例えば、チラシを自分でポスティングするにしても、
どの地域から重点的に集客すれば良いのか?その判断基準がない為、
とりあえず広い範囲でまいてみる。
結果、反応が薄いために、再度広告投資をするということを繰り返
してたということが有りました。

原因が、明確な判断基準が無いが為に、無理や無駄が多く、収益の
圧迫につながっているというのは強く感じてはいたのですが・・・。


【名和田】そこから、ランチェスター戦略を学び、今では地域NO.
1店(保育園)となったとのことですが、当時のその地域における
競争状況は、どのようになっていたのでしょうか?


【玉居子】私の園は、ランチェスター戦略を導入する以前は、周
辺地域では4・5番手といったところでした。

当時の1位の企業(園)は、現在も2位で、いわばもっとも手ごわ
いライバルなのですが、当時は圧倒的1位で、自社とのシェアの差
は、3倍近く離されていたと思います。

それ以外にも、近隣に4社ほどありましたが、ランチェスター戦略
を導入後は、この4社よりもシェアを上回るのには、それほど時間
は掛かりませんでした。
しかし、当時の1位企業だけは、中々超えることができず、今年に
入って初めて抜くことができたという状況です。


【名和田】となると知りたいのは、具体的な戦略ですね〜。実際
にはどのようなことを行なったのですか?


【玉居子】ランチェスター戦略の中に「地域戦略」という項目が
あります。この地域戦略は、店舗型ビジネスを展開している方にと
っては特に有効的で、かつ実践に役立つ内容がふんだんに盛り込ま
れています。

私もこの地域戦略の考え方をベースとして、集客・運営を行ってか
ら急速にシェアの獲得をすることができました。

【名和田】もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

【玉居子】まずは地域の細分化を行い、その中で集客の重点地域
を決定し、そこに資源の集中投入をしました。

具体的には、チラシなのですが、この地域で一定の集客が取れるま
では、他の地域に資源を投入しない!と決めて配布したので、配布
地域の範囲は、ランチェスター導入前の1/3以下になりました。

その分、重点地域の配布量は場所によっては、3倍以上になる所も
有りましたが、自分が思っている以上の反響を得ることができたの
も事実です。

自社がここでは絶対に勝つ!と決めた地域から、集客ができなけれ
ば、シェアをあげることは難しいということを実感した一つの例で
もあります。


【名和田】チラシ以外では?


【玉居子】ハイ。まず競合を知るにあたり、ランチェスター戦略
でいうところの、ローラー調査を実施しました。

このローラー調査で、同業他社調査をする際は、女性スタッフと友
人男性をペアにして、夫婦役を演じてもらい、その園の集客状況や
雰囲気、課題などを直接見ることで、貴重な情報を得ることができ
ました。

まぁ、実際、同業他社の内情や戦略について調べた結論を言うと、
他の同業は、保育の部分についてはそれぞれ特色の違いが伺えまし
たが、マーケティングに関しては、これといった手法を実践してい
るところが皆無に等しい、ということがわかりました。

このことにより、ランチェスター戦略を正しく実践すれば早い段階
で1位の座を獲得することができると直感的に確信することができ
ました。


【名和田】でも、特色の違いがあったのですよね?それって、ど
んなものだったのですか?
また、それに対し、自社は何をしたら「いける」と思ったのです
か?


【玉居子】サービスの面でいえば、24時間営業していたり、自
社で手作りの調理をしていたり、駅前に出店をしていたり、幼児
教育に力を注いでいたりなどの特色がありました。

これらの情報をもとに、自分なりの分析をした中で、思ったことは
「お客様にとって重要な差別化」をすることだと思いました。
同業他社のサービスの中には顧客視点ではなく、自分視点でのサー
ビスの提供をしているところも多く見受けられたからです。


【名和田】そうですね。顧客視点・・・。よく言いますが、簡単
な様で、意外と見れていないケースが有りますよね。
実際に、1位となってからは、何か大きな変化は有りましたか?


【玉居子】1位になってからも、競合から見られる目というのは
あまり変わっていないと感じていますが、顧客(保護者の方)から
の目は変わったと感じています。

今までお子様を預ける際に、1位企業と当社の双方を比較対照した場
合に、どうしても1位企業にお預けする方が多く見受けられましたが、
1位になってからは、当社を選択する方が増えていると実感しており
ます。


【名和田】まさにそれが、NO.1になるメリットの1つですよね。
1つお聞きしたいのですが、この業界は、理念や教育方針が、通常の
企業以上に、大きく影響しそうに思われますが、貴社はどのような
理念や方針を掲げていますか?


【玉居子】保育園に限らず、人が商品のメインとなる業種(たと
えば美容室や学習塾など)は、特に経営理念を明示し、かつそれを
人材育成の柱として浸透させることが、同業他社との最大の差別化
になると考えます。

また、機能的かつ戦略的な組織構築にも欠かせない重要事項だと捉
えています。

経営理念の浸透は「人材」を「人財」へと育てる、最良の手段と考
えます。経営理念を軸とした経営手法を「理念型経営」と呼びます
が、この「理念型経営」の導入が何よりの差別化と考えています。


【名和田】是非、貴社の具体的な理念についてもお聞かせ下さい。


【玉居子】『保育サービスを通して、地域の方々、保護者の皆様、
子供たちに喜びや感動、幸せを提供する』をモットーにサービスの
向上と質の維持をすべく日々、業務に取り組んでいます。

また利用頂いている方々には、『保護者の方や子供たちのライフス
タイルを彩り、夢や目標の実現を応援する保育園』になるという理
念を掲げております。
言うは易し、成すは難しということを強く実感しておりますが(笑)
それでもこの理念を実現することが、自社の存在意義になっている
と感じております。


【名和田】素晴らしいことですよね。是非その志を貫いて頂きた
いと思います。それでは、最後に保育園の今後の戦略、構想など、
玉居子さんのビジョンについてお聞かせ下さい。


【玉居子】前述の地域戦略の考え方に基づき、今年の9月に2店
舗目を開設しました。来年には近隣地域へ3店舗を開設することを
決定しております。

ランチェスター戦略の考え方でいうところのNO.1の地位を盤石に
して、まずは、足元である越谷市における絶対的地位を確立したの
ちに、次の地域への進出を検討したいと考えております。

今後も、保育サービスを通して、地域の方々、保護者の皆様、子供た
ちに感動や喜び、幸せを提供することを使命として、取り組んでい
きたいと考えております。

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<インタビューを終えて>

わずか1年弱で、地域NO.1の保育園になったと聞いて、どんな戦略
を仕掛けたのか?話しを聞くまで、非常に気になっていました。
ランチェスター戦略では、戦略とは「目標達成の為のシナリオと資
源の最適配分」と提議していますが、今回のケースは、まさにこの
最適配分が功を奏したのではないかと感じました。

ただ、それ以上に玉居子氏の言う経営理念が、しっかりと親御さん
達へと伝わったことが結果へと繋がったのではないかと思います。

余談ですが、うちの子も来年から幼稚園です。
毎日の送りは私の日課!今からワクワクしています。
また楽しみが増えそうです。                   
                       (by nawata)