先日、街を歩いていて、ミスタードーナツに人が並んでいるのを見ました。

並んでいるといっても、クリスピークリームドーナツのような行列、と言うほどではなく、ちょっと並んでいるね、という程度でしたが、「ここでもドーナツブームなのかなぁ」と思ったものでした。

最近知ったのですが、ミスタードーナツも「リッチドーナツ」と言うものを出しているみたいですね。
http://www.misterdonut.jp/newpro/070919_001/rd_06.html

私自身はこれをテレビCMで知ったので、まだ味のほどはわからないのですが、見た目や内容はクリスピークリームドーナツに似ています。真似した、と言うと御幣があるかもしれませんが、リーダーの戦略の定石として模倣戦略を取ったと考えるのが良いと思います。

クリスピークリームドーナツとミスタードーナツの店舗展開の差を考えたとき、ミスタードーナツの牙城がクリスピークリームドーナツによって崩されるとは考えにくい程の店舗数の差が付いています。ミスタードーナツの店舗数は現在、1,294店(国内、うち直営店63店 HPより)であり、FC募集は休止しています。表現は休止としていますが、つまり現段階で新規に店舗展開できる余地が残された場所がない、とも言えるのではないでしょうか。実際にはくまなく探せば残されているのかもしれませんが、かなりニッチな状況になることは想像できます。

ハンバーガー市場で考えてみると、マクドナルドの店舗数は現在4000弱(3800店程度)だから、それに比べると1/4程度ではありますが、日本人が食べるドーナツの総量とハンバーガーの総量を比べてみると、十分な店舗数なのではないかと思います。

飲食の場合、商圏の広さの関係から良くこの議論に収束しますが、特殊なメニューの業態の場合、地域に必要なのは1店舗で十分では無いかと思います。有楽町のような人の異常に多い地域ならまた別なのでしょうが、普通の駅においては、ドーナツを食べたいと思う人は多くはないと言えるでしょう。つまり、その多くはないドーナツ人口を獲得して経済的に成り立つのは1店舗だけである、という議論です。これは、歴史的に見れば1998年にダンキンドーナツが撤退したことも同じ理由なのではないかと推測しています。ミスタードーナツとダンキンドーナツのどちらが美味しいか、という議論はあるのかもしれませんが、消費者にとっては生き残るのはどちらか一店舗で十分、と言う事なのではないでしょうか。

さて、ミスタードーナツは何故リッチドーナツなど出したのでしょうか?ただ真似したと言うことなのでしょうか?

戦略はやはり模倣戦略なのだと思います。ただし、模倣した理由はクリスピークリームをたたきつぶしたい、と言うことでは無く、むしろ、他のスイーツに奪われている顧客をドーナツ回帰させたい、と言うことではないでしょうか。つまり、日本の中で「ドーナツ市場」と言うものが大きくなれば、儲かるのは間違いなくミスタードーナツなのです。クリスピークリームドーナツは脅威の一つには数えられるかも知れませんが、戦略の方向性を決定するほどの規模にはまだなっていないと思います。

ミスタードーナツとしては、「クリスピークリームドーナツとリッチドーナツのどちらがおいしいか?」という議論になってくれればしめたものです。ロールケーキとドーナツのどちらがおいしいか、もっと言えば、ロールケーキとシュークリームとクッキーとタルトとドーナツのどれがおいしいか、と言うような議論になって欲しくはないでしょう。さらに言えば、「スイーツ」と言うカテゴリの中にドーナツという選択肢が入っていない状況こそがもっとも恐れている状況ではないでしょうか。

有楽町のクリスピークリームドーナツは、いまだに行列が続いているみたいです。また、銀座プランタンにあるmielも以前行列が出来ているのを見かけました。最近、ローソンでもドーナツを発売したみたいですね。
http://www.lawson.co.jp/company/news/1368.html
ドーナツブーム、随分長いこと続いているようですが、ドーナツ市場の勢力図も変わっていくのでしょうか?