先日、IKEAから冊子が届いた。別に、IKEAに何らかの登録をしたわけではないので、ポスティングであろう。せっかくなので、IKEAについて考えてみた。

総合的に言えば、IKEAの低価格は、ローコストオペレーションで、大量販売の仕組みを作ることだろう。バックヤードは見えないので、表から見るローコストオペレーションと、マーケティングから考えてみた。

まず、IKEAはどんなところかと言うと、第三京浜 港北インターのすぐそばに大規模な店舗と駐車場を作り、その中に大量の展示をしている。(IKEAの開店時の状況はこちら)
IKEAの店舗の特徴は、顧客が展示スペースを練り歩いて気に入ったものをメモしておいて、最後に倉庫スペースでまとめてほしいものを集めるという形態である事だ。店に入ると、商品記号をメモする紙がおいてある。顧客は、広大な敷地内をそのメモを持って練り歩き、気に入ったものがあれば、そのメモに商品記号を書いておく。最後にこれまた広大な倉庫スペースが公開されていて、そこからメモに書いてある記号の商品を持ってくるのである。

競合はいろいろあるのだろうが、私個人はニトリを想像したので、ニトリもちょっと意識しながら考えたい。
※実際、ニトリはIKEAを元にしたか、参考にした、と言うような事を聞いたことがあり、似ているのも当然なのかもしれない。

オペレーションだが、特徴的なのは、コスト負担を一部顧客に負わせている点だ。ニトリと同様、組み立て式の商品がほとんどだと思うが、やはり、展示スペースと倉庫スペースが分かれていて「欲しいものを勝手に持って行って」方式になっていることだろう。それともう一つのポイントは、ニトリの場合、展示棚の下に、在庫がおいてあったりするが、IKEAの場合は、展示スペースは展示だけしており、在庫は全て倉庫スペースから取り出すことだ。要は、ニトリに比べると、省スペースで、店員数も減らせるのかもしれない。
あとは、恐らくWorldWideの大量生産&仕入れだろう。家具は分からなかったが、小物はまずMade in japanでは無い感じがしたから、家具も当然WorldWideだろうな。

マーケティングは、見やすいので4P(4Pについてはこちら)で行ってみよう。
ターゲットは、来ている人たちを見ると、恐らく横浜市周辺、東急沿線地帯周辺の30代から40代ぐらいまでの夫婦のようだ。子連れも多い。一人で来ている人のほうが圧倒的に少ないだろう。家具と言う特性もあるのだろうが、基本的にファミリーや若い男女等が主要ターゲットと考えられる。立地や価格帯、プロモーションを考えると、ある程度の可処分所得があるファミリーがメインターゲットと見るべきか。

Price&Product:
 実を言うと、価格はそれほど安いと思わなかった。ニトリと変わらないのではないかと思った。勿論、品質の問題があるので、良いものを安く、といわれたらそうなのが・・・。
※家具に関する知見が余り無いので、品質に対する価格(いわゆる、値ごろ感)に関しては評価できず。

Place:
 やはり、特筆すべきは立地だろう。第三京浜は、東急東横線と田園都市線にはさまれた自動車道で、世田谷から横浜まで通っているため、この辺りの人たちが訪れやすい。もっと言えば、電車で来るのは大変かもしれない。周辺の駅から歩くのは私個人の感覚ではイヤだ。IKEAからすれば、電車で来られると困るのかもしれない。顧客が消費するのは、家具代と交通費だけであるべきで、送料が新たに加わってしまうと、その分のコストがかかってしまうからである。
 ちょっと面白かったのは、新たにバス停が出来ている(のだと思う)他、タクシー乗り場もあり、近隣の経済にプラスの影響がありそうだ。

Promotion:
プロモーションは店内と、先日届いた冊子の両面から考えたい。
店内は、四つの区域からなる。
・入口部分
 入口には、前述したメモとパンフレットのほか、子供が遊ぶスペースがあった。完全に子連れ、家族連れを意識したつくりにしているのだろう。
・展示スペース
 展示スペースは、2フロアあるが、道順に練り歩いて欲しいものを見つける形態である。途中、「近道」はあるが、基本的には順序どおりに辿って行くしかなく、顧客はマーケティングのシャワーを小一時間浴び続けることになる。通路が不可逆(戻ろうと思えば戻れるが)のも「ここで買わなきゃ」と思わせる仕組みなのかもしれない。
 工夫が見られるのは、家具屋に見られるただ陳列してある状態や、「こんなドラマみたいなスペースねぇだろ」的な展示ではなく、6畳ぐらいの間取りに仕切られた場所がそこここに見られる点である。日本、多分、この近隣の代表的な部屋の広さをイメージして、その中にいろんなコンセプトでまさに「提案」している。この形は、展示スペースを広く取っているこの店舗形態だからできる事だろう。これは非常に評価できる。
 あとは、そこここにPCがおいてあり、自分の部屋のレイアウトを設定してイメージを描画できるようになっていた。ちょっと使ってみたが、使い方がよく分からなかったので、ユーザインターフェースは工夫が必要かもしれない。
※これは本来、店員と一緒に見るものなのかもしれないが。
・倉庫スペース
 倉庫は、巨大な空間に巨大な棚が何列も立ち並ぶ、ハリウッド映画に出てくる武器庫のような感じになっており、ここで自分の欲しいものを集めてくるという仕組み。
・出口部分
 レジは、ほとんど空港のように、20台ぐらいの長いレジが並んでいる。レジの前に立ったら「Sight Seeing」とか言ってしまいそうなぐらい。
 とどめに食品類と、軽食が売っている。食品は、スウェーデンからの直輸入「っぽい(本当かどうか知らないので)」ものが並んでいた。なんか甘そうなパイとか、大きな駄菓子とか。
 小一時間練り歩いて腹減っているだろうから(一応、中に食事スペースもあるが)、ここでコーヒーとホットドックをつい買ってしまうのだろう。ここでも、食券式だったので、これもローコストオペレーションなのかもしれない。

一方、冊子であるが、冊子を眺めながら、要約すると4つの点を訴求をしていると結論付けてみた。
1) 低価格
 既に前にも述べたが、IKEAが低価格だとは私自身思っていない。が、彼らは自らを低価格だと言っている。実際に、ニトリのサイトに載っている商品とIKEAの商品を比べると、モノにも拠るのだが、あまり大きな差があるようには思えない。だとすると、この「低価格訴求」に関する差別化は、ターゲットがニトリユーザではなく、「高い家具を買う人」(例えば、大塚家具のメインユーザ等)なのではないかと思える。例えばこんなキャッチコピー。「この価格でこの品質。本当?ってキモチも分かりますが・・・・・・。」

2) 高品質
 パラパラとめくってみた中で一番好きなキャッチコピーがこれ。「一晩に3万回も寝返りを打つ人がいると思う?」。これは、IKEAのベッドがそれだけの耐久テストを通り抜けて品質を保証する、と言っている。まぁ、この辺りは品質+価格の訴求だが。この辺はただの安物とは違うぞ、と言う、やはりそれなりに高品質を求める人たちをターゲットとした訴求なのかもしれないし、それにプラスして、「低価格なら悪いもの」を信じてきた人たちをターゲットとしているとも言える。

3) 生活提案
 以前の店舗の話で「生活提案が良く出来ている」とは書いたつもりだが、ここでもやはりうまくやっている。「自分だけの空間を、テキスタイルで。」とか、「誰もがリラックスできる場所」とか。厳密にこれを生活提案と呼ぶかどうかは難しいところだが、モノ単体を売るのではなく、居住スペースを売っているという点ではそうとも言えよう。これは、ターゲットがどうの、と言うより、クロスセル、ソリューション提案、などと言われる範疇だな。コメントの量からすれば、このタイプが一番多いかもしれない。(分類の仕方によって異なるので注意&全てを網羅したわけでもない。)

4) 機能性
 小さなコメントとして、例えば「必要な場所に、収納スペースを。」とか、「据え付けが簡単な独立型」とか。これは、単体の商品を売るコメントか。

なんとなく垣間見えるのは、かなり広いターゲット層を狙っているのでは?と思える点だ。まぁ、敢えて言えば、車も買えないような所得レベルは相手にしていない、ある一定レベル以上なのは間違いない。また、郊外まで自分で車を走らせて買いに来るようなセレブも相手にしていない。まぁ、それもそうだ。
これは、やはり、「顧客数をとにかく増やして規模の経済性を働かせるため」の全方位のコストリーダーシップ戦略、と言えそうだ。