シナプス後藤です。

病児保育のNPOフローレンスを立ち上げられた駒崎さんが「保育士の給与はなぜ安いか」というエントリーを書かれていました。

 保育所の収入は「公定価格」と言って、補助金によって成り立っています。世帯収入がない人は保育料を払わないで良く、補助金でカバーされ、世帯収入が高い家庭はそれなりに(ただし上限がある)払ってもらう仕組みです。

 なぜなら、保育所は福祉施設であり、教育と同様貧富の差に関係なく利用できるようにするためです。オプションとしてお金を取ることも制限されています。なぜなら、「お金をもっとくれれば、もっと良い保育をしてあげるよ」となると、貧富の差なく受けられる保育という原則から外れるためです。

 さて、そうした仕組みがゆえに、保育所の収入額は決まってしまいます。一方支出の7〜8割は人件費です。
利益率が高ければ保育士給与の増額も可能ですが、税金で行う事業ゆえに、過大な利益は宜しくないということで、利益額はどんなに頑張っても一定程度しかでません。

 よって、保育士給与は低いままになります。

http://www.komazaki.net/activity/2015/11/004721.html

これは難しい問題ですね。
保育所(保育園)は厚労省管轄ですが、もともとは、「共働きにしないと生計が成り立たない家庭向けの施策」でした。(幼稚園は文科省管轄で「教育」の一環で、制度設計も全く異なっていると思います。)

そのため、保育所は国によってサービス価格が決められています。保育所ビジネスは預ける子供の人数に比例して保育士が必要な労働集約的なビジネスです。従って、サービス価格が決められてしまうと、ほぼ自動的に保育士の年収が決定付けられます。
制度上、世帯年収によって支払う保育額が変化します(当然、世帯年収が高い方が支払う額も高い)が、保育所には国の補助金を補てんして支払われるため、保育所側の収入は同じです。

ところが、今、安部政権が「一億人総活躍」と言っている通り、女性活躍が社会的に求められているし、女性のかなりの割合が専業主婦ではなく、やりがいを求めて働き続けたいと思ってきているのが現状でしょう。つまり、今保育園を必要としているのは、「共働きにしないと生計が成り立たない家庭」ではなく、「そこそこ稼げる世帯年収が高い家庭」です。特に、安部政権が期待しているのは経済活性化、GDP拡大ですから、誤解を恐れずに書けばむしろ年収の高い人ほど共働きになって欲しいわけです。

上記は認可された保育所だけに適用されるルールで、無認可のところは上記の限りではありません。以前の無認可保育所は「国が定める条件を満たせない劣悪な環境」のイメージがありましたが、最近ではサービスレベルが高い(その分価格も高い)ところも出てきており、多少の生態系は生まれているようです。しかしながら、認可された保育所は国の補助金が出るためかなり安価でサービス提供されるため、ほとんどの方が入れるなら認可保育所を選択します。認可保育所も場所によってサービスレベルはまちまちなのでしょうが、それでも価格が安いというのは大きく、市場形成の前提になっています。

駒崎さんは、助成金をもっと入れろ、という主張をされていますが、それも一つの選択肢かと思います。
私は誤解を恐れずに言えば、市場原理をもう少し持ち込んで、人気のあるところは高く、ないところは安くなっても良いのではないかな、と思います。産業としての魅力を感じられず、保育園が増えない、保育士が増えない、と言う事だと本末転倒です。

この辺は感情論が先行する分野になりがちなだけに難しいですが、いずれにしても、環境が大きく変化しているので、制度設計の考え方そのものを変えるべきではないかと思います。