シナプス後藤です

先日、新幹線内で焼身自殺という恐ろしい事件がありました。その時のJR、新幹線の対応が素晴らしかった、と言う事でネット系のニュースになっているようです。
焼身自殺の想定はさすがにないでしょうが、乗務員は安全な場所で運行を止め消火活動にスムーズに入り、かなり被害を押さえたようですし、そもそも、車両内でガソリン燃やしても車両に引火しないというのは凄い事です。

新幹線をはじめとして、日本の運航の品質は極めて高いもので、ここまでダイアが乱れない、というのは世界中探してもない、とはよく言われます。また事故率等も同様ですね。たまに脱線事故等があると物凄く目立ちますが目立つ理由はそれだけ事例が少ないからです。
新幹線の対応は素晴らしいですが、彼らのプロフェッショナリズムは単に意識が高いと言う事ではなく、日々の訓練、例えば、最低年一回避難訓練や防災訓練を実施しているでしょうし、定期的な筆記試験等もあるかもしれません。その時間は作業が出来ないわけで時間投資をしているのです。また、燃えない内装はその分高い素材を使いますから、材料代は場合によっては桁が違うくらいの事がありえるかもしれません。

我々消費者は、「これが日本品質だ、素晴らしい」と喜びますが、背景には彼らのコストがあります。そして、コストを下げると、我々消費者は「ふざけるな!」と言うでしょう。
つまり、環境適合して行った結果として高品質が存在しているわけです。


ところが、近年、特にアジア諸国で鉄道敷設のコンペが見受けられます。日本は品質が良いと言われますが、一方で過剰品質である、という指摘もあります。裕福な国でないならむしろ安かろう悪かろうの方が良いのではないか、と言う事です。

日本国内においては、焼身自殺があっても大丈夫な新幹線、と言うのは高い価値を持って受け入れられるのでしょうが、その声を素直に受け入れてしまうと、国際競争では勝てないこともあるでしょう。勝負ポイントが価格だからです。そして、負け続けてしまうと競合が安い価格で徐々にキャッチアップしてきてしまい、結果的に品質でも並ばれてしまう、と言うようなことはあるでしょう。

これは善し悪しの問題ではなく、戦略の問題です。つまり、高品質のものを提供し高い価格を頂くか、低品質のものを提供し安い価格で数を取るか。


我々、日本の消費者は、安くしろと言う事はあっても、企業の国際競争からみて「過剰品質にするな」と言う事は絶対にありません。とするならば、企業側の対応としては、それも踏まえて日本市場の位置付けを見直さなければならないでしょう。
日本市場で受け入れられた品質は世界のどこに行っても問題を起こさない品質である、とするならば、次の一手は、
・その品質を世界に納得させ当たり前にする

・その品質基準を元に、それぞれ市場にあった品質に出グレードする
のいずれかだと思います。

個人的には前者の戦略の方が面白いですが、難易度で言えば後者を取るべきでしょうね。


参考:イノベーションのジレンマについて
 「破壊的イノベーション」と技術革新の関連性
 クリステンセン教授の話を聞く