シナプス後藤です。

昨日(10/22)付の日本経済新聞 朝刊の私の履歴書に興味深い図が載っていました。
普段、私の履歴書はあまり読まないのですが、一目見て目が離せなくなりました。
hakken
出所:日本経済新聞


日本経済新聞 私の履歴書:根岸英一(21) 発見とは何か

根岸英一さんは、有機化学分野の科学者でノーベル賞受賞者です。その根岸さんが「発見」についての10項目を挙げています。
それが上記の図です。

発見に向けて最も大切な項目は、ブラウン教授に学んだ(4)系統だった探索だ。ただしこれを進めるためには、知性的な側面から3つの項目が欠かせない。(5)豊富な知識と(6)豊富なアイデア、そして(7)正確な判断だ。


「イノベーション」の話をするとかなり多くの確率でセレンディピティが出てきます。セレンディピティは予期せぬ発見のように言われますが、ある日突然湧いて出るように発見できることはほとんどありません。
偉大な発見は、その領域を深く深く調べていなければ見つけられないことが多いです。それだけ注力して初めて発見にぶつかるわけです。

その点で、「系統だった探索」を重要としているのはいかにもすぐれた科学者らしい回答です。新聞を読んでいて思わずうなってしまいました。
特に、新商品開発に関するビジネス書を読むと、「どのようにアイディアを出すか」に重きを置いているものが多数見られます。勿論、質の良いアイディアを出すのは難しいので価値はあるのですが、その本質はやはり「系統だった探索」でしょう。系統だった探索をしようとすると様々な障害が起こり難しいから、アイディアを数多く出す必要がある、と言う事です。言い換えれば、系統だった探索に繋がらないアイディアは単なる思い付きにすぎない。

ただし、上述したように質の良いアイディアを出すのは難しいです。恐らく、そういう背景も分かっていて、根岸さんは、計画の実現のためのアイディアは重要と言っているのでしょう。

アイデアは計画の実現のために特に重要だと考えている。大学の研究で学生や博士研究員がアイデアを持ってきた時、私は必ず「ほかにどういうアイデアを考えているのか」と聞いている。少なくとも5〜10個、望ましくは20〜30個のアイデアを持ち、最良と思われるものを検討すれば、よい結果に結びつく確率は高くなるはずだ。


質より量、と言う事ですね。言い換えれば、量を出す事で質を担保する、と言う事。


このフレームワークは、ビジネスにおけるイノベーションに置き換えても同じことが言えるでしょう。願望(≒ビジョン)とニーズを元に計画を立て、知識・アイディア・判断と、それを実行する意志力・不屈の行動力で系統だった探索を行います。そうすると、必ず何らかの発見、或いはセレンディピティが起こる、というものです。
自然科学であってもビジネスであっても、「発見」のアプローチは同じ。要するに原理原則、と言う事なのではないでしょうか。