シナプス後藤です。

近年、行動観察を主体とした調査手法がちょっとした流行になっているように感じます。生活者を見ることで、何か新しいニーズを発見できるのではないか、と言う事ですね。

日本では、大阪ガス行動観察研究所が結構名前としては出てくるようで、恐らく所長の松波春人さんがかなり先進的に取り組みをされているからなのではないかと思います。


先日、興味があって「ビジネスマンのための『行動観察』入門」読んでみました。
ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

内容としても意味がありそうですし、読み物としても面白いので本としてはお奨めです。
ただ、この本は「行動観察とは何か?」と言うのを紹介するものですので、実際に行動観察をやるためにはもっと専門書が必要になるようには思います。


行動観察が重要になってきているのには背景があります。これはイノベーションが重要になってきている、と言う事も同様です。行動観察を用いた調査手法と、従来型(と言ってよいかどうか分かりませんが)のアンケートや対面インタビューを主体とした方法との本質的な違いは、「ニーズを回答者が明示できるか」もしくあ「調査する側が十分な仮説を立てられるか」という事に起因します。ユーザの声が直接ニーズに繋がるようなありきたりなニーズはもやは差別化要素にはなりえない、と言う事です。
例えば、今、電気自動車に求められるのは長距離走れること、充電を気にせずに走れることです。そのために電池に関連する各社がしのぎを削っています。
或いは、パソコンはどうでしょう?多くのユーザが基本的にスペックには満足しており、より早いスペックは「あればよいけど、買うまでもない」と思っている方が多数なのではないでしょうか?
つまり、明示されたニーズは実現が難しく各社がしのぎを削っているか、そもそも強い欲求がないのです。

では、ニーズは無いのか?
あります。現代でも100%幸せで理想的な生活をしている人がほぼいないので、必ずニーズはあります。ただ、それに企業側が気付いていないだけなのです。
しかも、たちの悪いことにユーザ自身も何に困っているのか気付いていないことが多い。

新しいニーズを発見するのが難しいからこそ、新しい手法が必要になってきています。
そういった見えないニーズを発見する手法の一つが行動観察です。


本の中では、行動観察の事例を紹介しながら、どのように進めるのか、どんな内容が見えてくるのかを紹介しています。
ワーキングママの事例等は、なるほど、見ないと分からない非常に深い内容になっていますね。これの重要な点は「見ないと分からないが、(見る人が)見れば分かる」ことが上がってくる、と言う事でしょう。

シナプスでも営業プロセスの可視化や成功要因の明確化等はコンサルティング・プロジェクトとして取り組むことがあります。その中でもこういった同行による観察を入れていくことでより成果につながるのでは、と思います。

参考にしたい分野ですね。