シナプス後藤です。

最近、代官山の「蔦屋書店」、代官山T-SITEが話題です。
代官山 T-SITE

少し前の話になりますが、友人のblogを見ていて、非常に感銘を受けたので、私も空いた時間を利用して立ち寄ってみることにしました。
Hiroの 「グローバルで負けないリスクテイク出来る日本へ」・・・代官山「蔦屋書店」で思うこと

代官山T-SITEは、TSUTAYAを展開するCCC(カルチュアコンビニエンスクラブ)が作る新しい形の商業施設です。
1Fは書店・文具とスターバックス、2FはCDレンタル、DVDレンタルとラウンジです。
驚くのは1Fも2Fも「コーヒーを飲みながら見る」ということを推奨している点です。最近、カフェを併設している書店が増えた気はしますが、コーヒーを飲みながら見る、と言う事を推奨しているところは始めてみました。コーヒーこぼしたらどうするんだろう?という疑問など関係なく、「顧客が心地よく本に出会える空間」を作っているのでしょう。

1Fの書店を見てみましょう。先日、書店に行って驚いたのは、その配置です。私が良く知る書店は「雑誌コーナー」「新書コーナー」「文庫コーナー」等に分かれています。が、蔦屋書店の並びは、「カテゴリ」です。
私はいつも趣味の欄に「バイク」と書きますが、正直、「バイク」というカテゴリで棚が4つぐらい占拠されているのは始めて見ました。マニアックな話かもしれませんが、「バイク」には様々なカテゴリがあります。キリスト教にカトリックやプロテスタントなど宗派があるように、バイクにも「レース好き」「いじり好き」「HONDA党」「DUCATI派」等様々分かれるのです。バイクに乗らない人は「ライダー」「バイカー」とひとくくりにしますが、レースを見るのが好きな人と、バイクをいじるのが好きな人は根本的に読む本が異なるのです。
バイクコーナー1_25バイクコーナー2_25













カテゴリをしっかり分けている、ということも驚きですが、分けられるくらいの在庫を代官山の一般書店が持っている、という事自体に更に驚きです。
彼らが提供しているのは恐らく、「新しい本=文化に出会う体験」ということです。

また、2Fに行ってみましょうか。CDレンタルもびっくりしたのはその場で視聴できる点です。CDレンタル店は棚にはケースだけ並べておいて借りるときにCDを出しますが、T-SITEは棚にあるCDケースにCDが入っています。そのCDを持ってヘッドホン付きのCDプレイヤーのある場所に行き、自由に視聴ができるのです。しかも、そこにも「コーヒーを置く台」があるのだから驚きです。つまり、「音楽を聞く体験」を作っているという事です。


さて、CCCという企業は、CDとビデオのレンタルショップTSUTAYAのフランチャイズ展開で拡大してきました。規模が拡大していくと、会員カードを保有する顧客数が拡大したため、その会員を使ったT-カードを展開します。私が良く行くところではファミリマートとドトールが提携しており、カードのポイントが利用できますね。
最近のTSUTAYAは、CD、DVDレンタルだけでなく、書籍販売、CD・DVD販売、コミックレンタル等もやっていますね。
TSUTAYAの強みは、もともとはその店舗網にありました。
レンタル業界の2位はGEOですが、TSUTAYAが1400店(2011/03/03時点)、GEOが1101店舗(2011/03/31時点)ですので、大分差が縮まってきましたが、それでもまだまだリーダー企業に変わりありません。

しかし、TSUTAYAにも厳しい現実があります。それは、インターネットのサービス拡大と小口流通網の発達です。
インターネット上では音楽も動画も書籍も電子化されています。著作権の問題はまだ解決していない点も多いのですが、今の消費者の活用方法からするとこの流れはもう止められないでしょう。要は時間の問題です。
また、時間が稼げると言っても、一方ではヤマト運輸をはじめとする小口流通、物流網がほぼ全国を網羅していますので、配送料がかなり安くなっています。そうなると、TSUTAYA自身がDISCUSSというサービスを提供している通り、店舗が無くてもDVDを借りることができるのです。ただ、これらのサービスはTSUTAYAの強みである店舗が不要なので、例えば、楽天なども同様のサービスを展開していますね。

つまり、5Forces分析でいう、代替品の脅威にさらされまくっている、と言う業態なのです。


CCCは、もともと「CultureをConvenienceする」、文化を世の中に提供していく、新しいライフスタイルを提供していくことを理念とした企業です。気軽に映画を見られる、というライフスタイルを提供したのが「レンタルビデオ」だとすると、代官山T-SITEで目指したのは、「新しい書店のあり方」「新しいレンタルのあり方」なのかもしれません。

顧客が欲しいのは本なのか?DVDなのか?
いや、そうではない、顧客が欲しているのは、新しい体験であり、自分が知らなかった知識や情報である、と言う事を真正面から取り組んだ新しいサービス業、と言う事なのかもしれません。彼らを単なる「本屋」「レンタル屋」と言うにはどうやらコンセプトが違う、そんな気がします。


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