シナプス後藤です。

南極大陸も第四回目になりました。
※今回もネタバレご注意ください。

TBS 日曜劇場「南極大陸」
ドラマ「南極大陸」を見て時代について考える
南極大陸にみるリーダーシップ
南極大陸で考える重い組織

今回、私が感じたのはドラマも冒頭の星野教授(香川照之さん演)のセリフです。
「南極を征服するのではなく、南極に生かして頂いているんです。」


近年、多くの企業が組織内に創造性を求めています。これは、特に国内の多くの業界が成熟してしまい、今後、成長していくためには新しいものを生み出す力、すなわち創造性が求められるからです。
本質的には、組織に創造性が求められるのは、環境が変化するからです。変化が少なければ少ないほど、創造性を必要としない。大きなビジネスモデルの変化など、やらない方が良いわけです。
但し、市場は変化し、顧客ニーズは変わり、競合の戦略も変化します。そうなると、自社は環境適合する必要が出てきますので、よりよい価値を提供するために創造性が必要になってくるのです。この変化のスピードが早ければ早いほど、創造性の重要度が高まります。

南極と言う場所は、変化が激しい、と言うよりも、まだ状況が良く分かっていない状態ですので、かなりの創造性が求められるはずです。
それを言葉にしたときに冒頭の「征服ではなく、生かして頂く」つまり、環境適合しましょう、と言う事だと思うのです。


創造的な組織を作るために、リーダーである星野教授は幾つかの施策を実施しています。ドラマの中で気付いた点としては、
1) 大きなルールを決める
2) シャドーワークを推奨する
3) 任せる
の三つがありますね。

1) 大きなルールを決める
 南極観測隊の法律を決めていました。
第一条) ビールは手酌で
第二条) 誰も死なない。
等でした。良く、創造的な組織では自由が良い、と言われますが、実際は過度に自由なのは難しさがあります。たとえば、新規事業を考える、新商品を考える、と言う事にしても、何も規定が無いと考える範囲が広すぎて難しくなってしまいます。一方で、大きなルールや目的、目標を設定すると、それに向けて様々なアイディアが出ます。つまり、方向性を規定する、あるいは、「こっちはやらなくてよい」ということを規定することが以外と重要だったりします。自由すぎない程度に自由、が重要なのですね。

2) シャドーワークを推奨する
 シャドーワークとは、一般的には「フォーマルな組織やプロジェクトではなく、非公式な活動」と定義されます。たとえば、業務時間外の有志の勉強会や、こっそりと進める研究テーマなどがこれに当たります。
 非公式で進める意味は、要するに、「既存の常識に縛られない」ことが作りやすいことです。たとえば、組織の意志決定ルールや、今までの勝ちパターン等を踏襲しようと思えば、公式に進める方が良いのですが、もともと創造性とはそこから外れることに意味があります。ですので、シャドーワークが重要になってきます。
 星野教授が倉持(木村拓哉さん演)に言わせたのは、一人ひとりテーマを持って研究を、と言う事でしたが、これは組織で命じているミッションとは別のものですね。星野教授が認めているのだからある意味では公式なミッションかもしれませんが、国家プロジェクトとしての「越冬隊のミッション」とは別のところに置かれているのだと思います。

3) 任せる
 星野教授の口癖は「やってみなはれ」です。やってみなはれで有名なのはサントリーですが、サントリーはこの「やってみなはれ」の文化から、新しい試みが生まれてくる、と言います。新製品の成功事例の幾つかは、社長の反対を押し切って成功した、と言う事もあるようですね。


これらの試みも全てはトップである星野教授のスタンスから出てきています。幾ら施策を決めたとしてもトップが率先垂範しなければ組織はぶれていきます。
その点で、彼の失敗に対する許容性はとても優れています。失敗から学び、個人の成長を待ち、という優れたリーダーシップが見えます。南極、という極限の場だからこそ、こういうリーダーシップの取り方が余計に優れて見えるのかもしれません。


最後に、アインシュタインに言われた、というセリフが痺れますね。

「人のやらないことをやれ、失敗を恐れてはいかん、人は経験を積むために生まれてきたんや」

これが創造的な組織を作る本質だと思います。