商品戦略を考える場合、顧客に対して単一商品をどうするか、どう議論だけでなく、保有する商品で考える必要があります。特に、小売業態の場合、顧客は「選ぶ」という価値を感じるため、ターゲット顧客にあった品揃えが必要になってきます。

プロダクトミックスを考える際、幅、長さ、深さの三の軸があります。

幅とは、製品ラインが何種類あるか、です。例えば、家電量販店であれば、パソコン、音楽プレイヤー、オーディオ、ビデオ、テレビ、、、等の一つ一つが製品ラインになります。長さとは、一つの製品ラインの中にどれだけの種類があるか、です。例えば、テレビで言えば、REGZA、AQUOS、BRAVIA、VIERA、、等ですね。さらに、深さとは、その中で幾つアイテムがあるか、色やサイズなど、どれだけのバリエーションをそろえているか、と言うことです。

小売はその業態特性から、プロダクトミックスの決め方が差別性になることが多いです。
もともと、小売店はモノの無い地域に様々なものを届ける最終地点として整備され拡大されてきました。したがって、一番最初はとにかく幅が重要でした。それが拡大していったのが百貨店という業態ですね。
百貨店は商品の幅も長さも深さも多いのですが、これは顧客が「この店で全てをそろえられる」という価値を感じられるため、広い商圏からたくさんの顧客を集客し、「何でも揃えて何でも買える」状態を作り上げてきたのです。
もう一つの方向がコンビニで、「とにかく近くにある」という事を重視した業態です。近くにあってとにかく困っているから、製品ラインの幅だけ準備して最低限のものをすぐに買える状態を作り出しています。

モータリゼーション、つまり、車社会が出てくると人々の行動範囲は格段に広がりました。そうなると、「良い物をより安く」買いたくなり、買い回り現象が起こり始め、百貨店のように1店で、というよりも、複数店回ってもよいのでいろいろみたい、という現象がでてきます。そこで拡大したのが、「専門小売店」と言う業態ですね。
例えば、家電量販店は基本的にその一店で家電が揃いますが、家電以外の商品は買えません(※)。つまり、幅は捨てて長さと深さを拡大した業態なのです。


小売店と言う業態は、結局、良い品揃えが出来れば強い差別化が出来ます。したがって、歴史的にバイヤーの地位が高くなってきたのですが、そもそも論にからすると「誰を顧客として」「その顧客が望む品揃えをどうやって実現するか?」が重要です。ただ、安く仕入れればよい、という事ではなく、顧客にいかに提案するか、これが今求められるプロダクトミックスのポイントになるでしょう。

※家電量販店、特に、ヤマダ電機は奥行きよりも幅を優先するような業態になってきましたね。これは家電が売れ筋商品の価格勝負、というのが強い業態だからなのかもしれません。ドラッグストアも同様ですが、専門領域だけでなく、食品なども扱い始めており、百貨店化が進み始めているのが興味深いところです。