近年、様々なビジネスシーンで「創造的に考える」「発想力」が求められているように感じます。市場全体が成熟してくると、今までの延長線上のビジネスでは成長が期待できない、というのがその裏にあるのだろうと思います。
以前、「家弓正彦の仕事塾」シリーズで、「クリエイティブ・シンキング」を実施いたしましたが、これらもその世の中の要請に押されてのことでもあります。

発想力や創造思考、というと、よく「前提を外して考えろ!」と言われます。なるほど、確かに、ビジネスを変える考えも、「成長期の競争ルール」を前提としてた業界の常識を打破する、というのも一つの手段です。
ですが、この「前提を外して考える」というのはとても難しいことだと思います。一部の天才ならいざ知らず、我々凡人には言われてすぐに「前提を外す」事は出来ないのではないでしょうか?

前提を外して考える、という事例として、コロンブスの卵の話を聞きます。コロンブスの卵の逸話は(後世作られたものらしいですが)、次の通りです。

「アメリカ大陸横断なんて誰でもできる」と言った人に対してコロンブスが「それならこの卵を立てることができますか?」と聞き返した。相手が返答に窮すると、卵の底をつぶして「ほら、立ちました。」とやってみせた。相手が「そんな方法なら私でも出来る」と答えると、「でもあなたはやりませんでした。しかし、私は最初にやりました。」と言いました。

ここでのポイントは大体2通りですね。
1) 最初にやったものがエライ
2) 前提(卵を割ってはいけない)を外して考えることで偉大な結果が生まれる

ここでは、この2)の方にフォーカスしたいと思います。
これは何が凄いか、と言うと、「卵を割ってはいけない」と言う前提を発見したことが凄いのだと思うのです。前提が分かっていれば、「この卵を割っても良いので、卵を立てる事が出来ますか?」もしくは、「卵の底には空洞があり、つぶしても中が出てきません。さて、卵を立てることができますか?」と前提を知らせてあげれば、それを外すことは簡単だと思うのです。

だから、卵を立てるためには「前提の外し方」ではなく「見つけ方」を知る必要があります。しかも、一部の天才がひらめきによってだけ見つけるのではなく、誰もが苦労すれば見つけられるような。

その一つの解決策は、論理的な思考法であると思っています。問題解決力、と考えても良いかもしれません。
ここでのアプローチもいきなり割る割らないの議論ではなく、一つ一つ解きほぐします。
・問題は、「普通にやると立たない」こと

なぜ立たないのか?
・底面が丸いものは、平面上におくと極めて不安定だから

こう考えると、三つの仮説が成り立ちます。
a) 極めて不安定だが立たないわけではない
b) 底面が丸くなければ立つ
c) 平面でなければ立つ

この時、b)を考える時、「なぜ底面が丸いのか?本当に丸いのか?」と問うたとき、卵の底面が必ずしも丸くなくても良い、つまり「卵を割らないことが前提になっている」と言う事に気付きやすくなります。これで少しはジャンプ幅が狭くなったのではないでしょうか?
一方で、c)の視点でとらえると、卵のパックの上に立てる、砂の上に立てる、等の対策も思いつくと思います。
発想力は、力としては大事なのですが、何もないところから生み出すのは難しいものです。だから、最低限超えるべき前提を明らかにしたり、その前提が成り立つためのメカニズムを明らかにしてやる必要があると思うのです。
前提を見つけるときまで「自由な発想で考えて」では、ジャンプ幅が大きすぎて正しい解に至るのが難しいのではないでしょうか?

そうやって考えると、a)の前提も気になります。
疑って考えてみると、卵も頑張れば立つのではないでしょうか?



、、、


立った!

全体_25%接地面_25%


そうなのです。卵は立つのです。
これも、前提を丁寧に考えて出た結果ですね。

結局何が言いたいかと言うと。
・凡人がアプローチするための発想力のポイントは、「前提を理解する」事にある。
・前提自体は、論理的に考えることによりかなりの部分が分かる。
・論理的に考えることにより、ソリューションが複数生まれる

という話でした。