シナプス後藤です。
コンビニエンスストア(以下、コンビニ)業態が、小売の中の大きな地位を占めてからかなりたちますが、コンビニは相変わらず「価格高め」で、スーパーマーケットやドラッグストアと比較して価格で勝負するプレイヤーがいません。
これは何故なのでしょうか?
一方、価格競争が起こっている業界としては、典型的には家電量販店、および、牛丼でしょう。それらはなぜ価格競争になったのでしょうか?
価格競争に入るためには二つの要素が必要です。
1) 低価格にするメリットがあること
2) 誰かが低価格にした場合に追随するプレイヤーがいること
コンビニが低価格競争にならず、家電量販や牛丼がなった理由はこの二つの要素に帰着します。
1) 低価格にするメリット
一般に、低価格にすると顧客は増えます。しかし、低価格にしたときに顧客数がどれくらい増えるか、つまり、価格弾力性は業態などビジネス特性に依存します。
典型的には卵のような日用のコモデティ品は価格弾力性が高い、つまり、低価格にするとたくさん売れる傾向があります。一方で、薬のような必需品は価格弾力性が低い事が多いです。(死んでしまうのであれば幾らでもお金を出す、ということですが、だから国が規制をかけていると言う事でもあります。)
さらに、顧客が増える、販売数が増えると、コストが安くなることが多いです。これは、規模の経済性、と呼ばれるもので、固定費の比率が高いビジネスでは特に影響が大きいです。典型的には携帯電話のキャリア(例えば、docomo、AU、softbank)はこれにあたりますが、基地局への投資額が大きいため、利用者が増えるとその分の固定費が吸収されるため、コスト比率が低くなる、ということです。そのため、拡大期には0円携帯が流行っていましたね。
価格競争が起きている、家電量販店は、販売数が増えるとメーカーへの交渉力、つまりバイイングパワーが強くなります。
では、コンビニはどうか?
コンビニエンスストア、と言う業態は、顧客の近くに立地して、基本的なものが幅広く品ぞろえされており、利便性(欲しい時にすぐ手に入れられる)が主要な価値です。低価格にすると顧客は増えるでしょうが、その業態特性から商圏の範囲、つまり買いに来る顧客が存在する範囲が狭く増える余地がそれほど多くありません。さらに、少量多品種の在庫なのでまとめ買いも期待できません。(むしろ、まとめ買いされると困る)
従って、価格を安くして集客してもそれほど儲からない、むしろ赤字になる可能性もあります。さらに、競争相手は競合コンビニよりむしろ、低価格で販売するスーパーやドラッグストアになるわけで、そこより安くするのは結構大変です。
更に言えば、コンビニはフランチャイズ形態をとります。従って、安易な低価格は短期的に各店舗の業績を悪化させる可能性があります。低価格戦略は大きなプレイヤーの方が採りやすい戦略ですが、コンビニは個々の店舗は個人オーナーなども多く、苦境に陥ると途端に耐えられなくなってしまうでしょう。
つまり、基本的に低価格にするメリットがありません。
2) 誰かが低価格にした場合に追随するプレイヤーがいること
一方で、そうは言っても競争戦略上、隣のセブンイレブンよりも安くしたい、という欲求があるかもしれません。例えば、コーヒーは他の業態よりも安く出来るもののひとつで、他の業態(コーヒー店や飲食店等)が店舗コストを負担しなければならないのに対して、イートインスペースが無い(最近は増やしてきていますが、それでも全体の割合としては低い)ので、その分だけ安く出来ると言う事でしょう。
では、価格競争になるか?
価格競争とは、複数のプレイヤーが「より安い価格を提示してシェアを獲得する事」を指します。上述通り、価格が決定的要因ではない、といいながらもやはり消費者としては安い方が良いに決まっていますので、となりに並んでいて同じものなら低価格を選ぶでしょう。
ですが、例えば、ローソンやファミリーマートが安くコーヒーを出したからと言って、セブンイレブンは価格追従をしないのではないでしょうか?理由は、価格による影響が限定的だからです。消費者が複数のコンビニを比べて選択購買しているわけではなく、概ね近くのコンビニに行きます。ですので、価格追従する意味が店舗限定になるわけです。(可能性として、個店施策として価格をいじる可能性はあるでしょうけど、各店舗も利益を削りたくはないので追従する可能性は低いでしょう。)
一方で、家電量販はまさにそうでしたが、購入単価が高い事や、購入するほとんどの商品はナショナルブランド、例えば、panasonicや日立、sony等の製品でどこで買っても同じものが手に入る(最近では、家電量販オリジナルモデルがあるようですが)ため、結果的に店を買い回り価格が勝負を決める可能性が高いです。言い換えれば、価格で勝負できなければ、顧客を獲得できなくなってしまうわけで、そうすると、メーカーに対するバイイングパワーも失われてしまいます。
結局のところ、顧客が価格以外の要素で購入している(≒価格弾力が大きく働かない)のが要因なわけですが、競争に陥る背景を理解しておくと、より理解が深まるかと思います。
コンビニエンスストア(以下、コンビニ)業態が、小売の中の大きな地位を占めてからかなりたちますが、コンビニは相変わらず「価格高め」で、スーパーマーケットやドラッグストアと比較して価格で勝負するプレイヤーがいません。
これは何故なのでしょうか?
一方、価格競争が起こっている業界としては、典型的には家電量販店、および、牛丼でしょう。それらはなぜ価格競争になったのでしょうか?
価格競争に入るためには二つの要素が必要です。
1) 低価格にするメリットがあること
2) 誰かが低価格にした場合に追随するプレイヤーがいること
コンビニが低価格競争にならず、家電量販や牛丼がなった理由はこの二つの要素に帰着します。
1) 低価格にするメリット
一般に、低価格にすると顧客は増えます。しかし、低価格にしたときに顧客数がどれくらい増えるか、つまり、価格弾力性は業態などビジネス特性に依存します。
典型的には卵のような日用のコモデティ品は価格弾力性が高い、つまり、低価格にするとたくさん売れる傾向があります。一方で、薬のような必需品は価格弾力性が低い事が多いです。(死んでしまうのであれば幾らでもお金を出す、ということですが、だから国が規制をかけていると言う事でもあります。)
さらに、顧客が増える、販売数が増えると、コストが安くなることが多いです。これは、規模の経済性、と呼ばれるもので、固定費の比率が高いビジネスでは特に影響が大きいです。典型的には携帯電話のキャリア(例えば、docomo、AU、softbank)はこれにあたりますが、基地局への投資額が大きいため、利用者が増えるとその分の固定費が吸収されるため、コスト比率が低くなる、ということです。そのため、拡大期には0円携帯が流行っていましたね。
価格競争が起きている、家電量販店は、販売数が増えるとメーカーへの交渉力、つまりバイイングパワーが強くなります。
では、コンビニはどうか?
コンビニエンスストア、と言う業態は、顧客の近くに立地して、基本的なものが幅広く品ぞろえされており、利便性(欲しい時にすぐ手に入れられる)が主要な価値です。低価格にすると顧客は増えるでしょうが、その業態特性から商圏の範囲、つまり買いに来る顧客が存在する範囲が狭く増える余地がそれほど多くありません。さらに、少量多品種の在庫なのでまとめ買いも期待できません。(むしろ、まとめ買いされると困る)
従って、価格を安くして集客してもそれほど儲からない、むしろ赤字になる可能性もあります。さらに、競争相手は競合コンビニよりむしろ、低価格で販売するスーパーやドラッグストアになるわけで、そこより安くするのは結構大変です。
更に言えば、コンビニはフランチャイズ形態をとります。従って、安易な低価格は短期的に各店舗の業績を悪化させる可能性があります。低価格戦略は大きなプレイヤーの方が採りやすい戦略ですが、コンビニは個々の店舗は個人オーナーなども多く、苦境に陥ると途端に耐えられなくなってしまうでしょう。
つまり、基本的に低価格にするメリットがありません。
2) 誰かが低価格にした場合に追随するプレイヤーがいること
一方で、そうは言っても競争戦略上、隣のセブンイレブンよりも安くしたい、という欲求があるかもしれません。例えば、コーヒーは他の業態よりも安く出来るもののひとつで、他の業態(コーヒー店や飲食店等)が店舗コストを負担しなければならないのに対して、イートインスペースが無い(最近は増やしてきていますが、それでも全体の割合としては低い)ので、その分だけ安く出来ると言う事でしょう。
では、価格競争になるか?
価格競争とは、複数のプレイヤーが「より安い価格を提示してシェアを獲得する事」を指します。上述通り、価格が決定的要因ではない、といいながらもやはり消費者としては安い方が良いに決まっていますので、となりに並んでいて同じものなら低価格を選ぶでしょう。
ですが、例えば、ローソンやファミリーマートが安くコーヒーを出したからと言って、セブンイレブンは価格追従をしないのではないでしょうか?理由は、価格による影響が限定的だからです。消費者が複数のコンビニを比べて選択購買しているわけではなく、概ね近くのコンビニに行きます。ですので、価格追従する意味が店舗限定になるわけです。(可能性として、個店施策として価格をいじる可能性はあるでしょうけど、各店舗も利益を削りたくはないので追従する可能性は低いでしょう。)
一方で、家電量販はまさにそうでしたが、購入単価が高い事や、購入するほとんどの商品はナショナルブランド、例えば、panasonicや日立、sony等の製品でどこで買っても同じものが手に入る(最近では、家電量販オリジナルモデルがあるようですが)ため、結果的に店を買い回り価格が勝負を決める可能性が高いです。言い換えれば、価格で勝負できなければ、顧客を獲得できなくなってしまうわけで、そうすると、メーカーに対するバイイングパワーも失われてしまいます。
結局のところ、顧客が価格以外の要素で購入している(≒価格弾力が大きく働かない)のが要因なわけですが、競争に陥る背景を理解しておくと、より理解が深まるかと思います。